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STRATOVARIUS擁護論


STRATOVARIUSは日本で過小評価されている。のっけから何だ、と思われるかもしれないが、これは私の率直な印象である。過小評価が生じてしまった原因は明白である。BURRN! 誌における扱いによるものだ。

もともと、STRATOVARIUSを世界で一番早く評価したのはおそらく日本人である。正統的なHR/HMが失速していく時期にデビューしてしまった彼らはある意味不運であったが、ある意味幸運でもあった。というのも、「TWILIGHT TIME」収録の「Hands Of Time」が日本のマニアの間で名曲として取り上げられたことで、彼らは日本での足がかりを築いたわけだが、アルバムが好調なセールスを挙げた要因は、この手の音楽をプレイしているバンドの絶対数が少なく、シーンのレヴェル自体低かったためである、と言わざるを得ない。この手のメロディック・スピード・メタル・バンドが百花繚乱の様相を呈している現在(2000年3月現在)では、このレヴェルではよほどのマニア以外見向きもしなかっただろうと思われるからだ(もっとも、メロディック・スピード・メタルのシーンをここまで活性化させた要因のひとつが彼らの成功によるものだったりするのだが…)。

彼らはサード・アルバム発表時には来日公演も実現させる。弱点といわれたヴォーカル面を専任シンガー、ティモ・コティペルトを加入させることによって改善し、4作目のアルバム「FOURTH DIMENSION」を発表。BURRN!誌のレビューで90点を獲得(評者は広瀬編集長)、2度目の来日公演も成功させ、彼らは順調に成長を続けていた。

ここで、STRATOVARIUSは「成長」どころではない大変貌を遂げる。バンドのリーダー、ティモ・トルキは、その技術に不満を持っていたドラマーとキーボーディストを解雇し、新メンバーを迎えることでバンドの演奏力強化を行ったのだ。ドラムに迎えられたのはGRAVE DIGGERやRUNNING WILD、AXEL RUDI PELL等でその力量には定評があった実力派、ヨルグ・マイケル、そしてキーボード奏者として元SILVER MOUTAIN〜YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE〜DIOで、天才キーボーディストとして知られていたイェンス・ヨハンソンを加入させた。

この人事は衝撃的だった。フィンランドのマイナー・バンドに、どうしてドイツ人とスウェーデン人、それも充分なキャリアを持った人物が2人も加入したのか、特に日本では誰もが首をひねった。それまで特に交流があるという噂もなかったし、アルバムにゲスト参加する、といった伏線もなかった。インタビューによると、ティモ・トルキが連絡先を調べ、次作のデモ・テープを送って加入の要請を行なったという単純な話だという。何事も試してみるものである。

これは推測だが、おそらくこの時点ではイェンス・ヨハンソンもヨルグ・マイケルも、ゲスト・メンバーに限りなく近いニュアンスで、STRATOVARIUSでプレイすることを承諾したのではないだろうか。ヨルグ・マイケルにとっては、この時点ではアクセル・ルディ・ペルとプレイするのも、ティモ・トルキとプレイするのも変わらない、といった程度の気分だったはずである。たまたまその後バンドが成功を収めたため、結果としてパーマネントなメンバーであることに納得してしまった、というのが真相なのではないか。

いずれにせよ、この人事でバンドの演奏は飛躍的に強化され、もともと楽曲自体には光るものがあっただけに、この布陣で発表された最初のアルバム「EPISODE」は日本のメロディック・パワー・メタル・ファンに歓迎された。BURRN!誌のレビューも初のクロス・レビュー扱いとなり、90点台こそなかったものの、概ね好意的な評価を得た。後で知ったことではあるが、ヨーロッパでもこの作品がきっかけになって彼らの注目度が上がり、本国のヒット・チャートでは初のTOP40入りを果たしたらしい。彼らの未来は明るいと、ファンも、本人たちも思っていた瞬間である。

問題の発端はその「EPISODE」に続く新布陣による第2弾アルバム、「VISIONS」発表時のBURRN!誌上のレビューにおいて発生した。以下、当時のレビューの引用である。

"お約束の王者"の新作は、HELLOWEENにイングヴェイ・マルムスティーンとアンドレ・アンダーセンが入った#1からラストまで期待どおりの様式美世界が展開される。イェンス・ヨハンソンという強力なアイテムを活用したネオ・クラシカルな様式を、ジャーマン系の様式という土台に乗せ、たまにQUEENSRYCHE系も混ぜ込むという手法は相変わらず。(今回の新ワザはANGRA) #4はマイク・ヴェセーラに歌わせたいし、#8はマイケル・キスクの声が聞こえてきそうだとか、#6はDREAM THEATERのイントロで始まるQUEENSRYCHEで#10はANGRAプラスQUEENSRYCHEだとか、無限に突っ込みを入れたくなるが、これで日本のファンが喜ぶことを知ってる彼らは頭がいい。(広瀬:83点)

様式美でーす、正統派でーす、メロディアスでーす。さあ、品行方正なメタル・ファンのみんな、リリースと同時にソッコーでレコード屋さんに走ろうぜ!! おにいさんも、いっしょにうたっちゃうぞお。いや、マジな話、結構いいアルバムを作ったんじゃないかな。激ダサの極致を突き進んでいた初期の頃に比べればかなり垢抜けてきたし、何しろ曲が、この手のスタイルのものはとにかく何でも好き、というリスナーのツボを突く作りになっている。(よね?) 既にファンだという人は勿論買うべきだし、それ以外でも、イングヴェイやHELLOWEENやQUEENSRYCHEを既に充分聴いているにも拘らず、それでも"もっと欲しくなっちゃうんですぅ…"という人は買えばいい。(前田:82点)

布陣の変化を問わず、この6thでもクラシカルHMが追求、いや繰り返されていた筈で結果はそのとおりとなった。「代々継承される伝統の繰り返し=様式美」「我々の愛するネオ・クラシカルの死守(進歩の如何に拘らず)=様式美」という2つの判断基準に照会すると真っ二つに評価が分かれるに違いない。個人的にも正統HMの様式に思い入れはあるがいずれの視点も持っていないし、俺の好きな様式美BLACK SABBATHの作品はどれも違うし唯一無二だけど、と思う。メロディ、歌唱の説得性が依然薄弱なのは大きな減点だがHELLOWEEN、イングヴェイ、QUEENSRYCHE直伝の着想にも寛大な支持者が歓迎する作風と品質は備わっている。Dsの多彩なフレーズに感銘を受けた。(奥野:81点)

程度の差はあれ、どのレビューにもポジティヴな感情は全く感じられない。広瀬氏のレビューは他アーティストとの類似点の指摘に終始するのみだし、前田氏のレビューはメロディック・スピード・メタルとそのファンに対する嘲弄とも取れる。奥野氏のレビューに至っては、最後の2文を除き入稿15分前に書きなぐったとしか思えない意味不明の代物で、ほとんど作品レビューの体をなしていない。そして、これらのレビューに対し、ティモ・トルキはなんと抗議のFAXをBURRN!の編集部に送りつけるという前代未聞の行動に出た。そしてその行動は、編集長のコラムを通じて読者に公開されてしまったのである。以下がその編集後記において公表された、ティモ・トルキが送りつけたFAXの全文である。

「STRATOVARIUSの新作のレビューは何だ。編集長のくせにもう少しマシなアルバム評が書けないのか。ROYAL HUNTがどうこう言ってるが、あんなバンド日本でしか存在しないんだ。HELLOWEENやイングヴェイと比較するなんて愚かだ。俺のバンドはHELLOWEENやイングヴェイより先に今の音楽をやっている。なぜ奥野や前田みたいなデス・メタル野郎にSTRATOVARIUSをレビューさせるんだ。FAIR WARNINGのアルバム評はあいつらにはさせなかったくせに。QUEENSRYCHEとSTRATOVARIUSに同じ点を付けた奥野なんて××(広瀬註:"耳の不自由な人"の差別用語)だ。オマエらは他のバンドと比べることしか出来ないのか。能なし。81点なんて点数を『VISIONS』に付けるなんてフェアじゃない。3ヶ月もスタジオで作業したんだぞ。81点なんて付けて俺達を潰す気か。そんなにSTRATOVARIUSが嫌いか。今までBURRN!で記事のページを獲得するのに苦労したのはオマエが総て悪いんだな。今やっと判った。オマエはSTRATOVARIUSが嫌いなんだ。それにインタビューがたった2ページとは許せん。インタビューした大野は全然やる気がなかったし。ANGRAなんかは16ページもかけてインタビューするくせに。ANGRAなんてHELLOWEENのコピーじゃないか。つまりオマエはSTRATOVARIUSが嫌いなんだ。それでROYAL HUNTみたいなどうでもいいバンドにページを与え、FAIR WARNINGのレビューからは前田や奥野を外し、QUEENSRYCHEを表紙にするのか。QUEENSRYCHEなんてもうダメじゃないか。METALLICAもQUEENSRYCHEもダメだ。俺達には5万5,000人の支持者が日本にいて、人気投票だって11位だ。オマエの妨害の割には健闘してる。ROYAL HUNTなんて日本しかツアー出来ないんだ。俺達は南米でツアーするんだぞ。」
(BURRN! 1997年7月号の編集長コラムから引用)

このFAXに対し、広瀬編集長は以下のようにコメントしている。

「それがどうした、と言いたくなるが、83点や81点で怒るとは凄い自信である。『マトモに書けない能なし』と言うなら、私達が手加減したのが悪かったようなのではっきりと言おう。STRATOVARIUSの音楽はデビューの時からずっとHELLOWEENの曲にイングヴェイのソロを入れたようなモノだから『いい加減にしろ』と私達は言いたいのだ。"イングヴェイになろうとして必死になっている"レヴェルのギタリストがイングヴェイと比較されて怒るなんて僭越もいいところだとも思うが、そもそも私がSTRATOVARIUSが嫌いなのだとしたら、過去に90点付けたのはどうしてだと思っているのだろうか? 私は、HELLOWEEN+イングヴェイというのも1つの手法として、ある程度までは認める用意もあったのだ。ただ、あまりにそればかりが続き、アイディア借用も大胆になっているようだから、こっちもウンザリして『ちょっと酷いぞ』と言いたくなる。それでもアルバムの質は低くないから80点以上も付けているのだ。83点で文句言われても困る。と、まあ、私も売られた喧嘩なので反論するが、実際には日本語の読めないティモに『奥野はデス・メタルが好きで大野はANGRAが好きで広瀬はROYAL HUNTやFAIR WARNINGが好きで…』と余計な"注釈"を付けつつレビューを英訳した日本人がいたのは明らかである。その"訳し方"に大きな問題があったのだと私は思う。訳した人はティモに連絡を取れるくらい彼と親しい人(情報によればファン)で、レビューで"盗作バンド"呼ばわりされたと怒り心頭で『BURRN!のレビューはアンフェアだ。広瀬はSTRATOVARIUSが嫌いだからこんなことを部下に書かせたりするんだ』とティモに"チクった"のだろう。愚かな行為だ。」

たしかにティモ・トルキの送りつけたFAXの内容はあまりにも感情的で、お世辞にも高尚な文章とは言えない。ただ、当然ティモ・トルキが日本語でFAXを送りつけるはずはないから、日本語に訳す過程で文章全体の雰囲気がより下品なものになってしまっている可能性はある。さらに、彼はフィンランド人で、英語が母国語でないために、表現の面で本人が意図した以上に直接的なものになってしまっている可能性も高い(イングヴェイの「暴言」にも似たような傾向があるだろう)。しかし、そのことを差し引いても、ここでROYAL HUNTを貶める必要は全くないし(そもそもアンドレ・アンダーセンの名前こそ出ているが、ROYAL HUNTの名前はレビューに全く出てこない)、HELLOWEENやイングヴェイより先にこういう音楽をプレイしている、というのは事実に反しているはずである。私も、ティモ・トルキという人物の人格や、こうした行為を擁護する気は全くない。

ティモ・トルキがこのような強気な行動に出た背景は、おそらく当のアルバム「VISIONS」がヨーロッパ各国で大成功を収めていたという状況があるだろう。私もこのアルバムを聴いて「最高傑作だ!」と思ったし、本人にもそうした自負があればこそ、感情的にもなったのに違いない。だからと言って、このような暴挙が正当化されるとは思わないが…。

ただ、広瀬編集長の、STRATOVARIUSの音楽に対する見解には異議を申し立てたい。要するに、「STRATOVARIUSの音楽はデビューの時からずっとHELLOWEENの曲にイングヴェイのソロを入れたようなモノ」という考えが、彼らに対する過小評価につながっているのは明らかである。

仮に、彼らの音楽が実際に「HELLOWEEN+イングヴェイ」だったとして、それのどこに問題があるというのだろうか? 逆にいえば、彼らの音楽は「HELLOWEENそのもの」でも、「イングヴェイそのもの」でもないのである。

例えば、IRON MAIDENの音楽だって、「JUDAS PRIESTのメタリックなサウンドにTHIN LIZZYのツイン・リードを導入し、GENESIS風のドラマティックな展開を加えたもの」というように表現できなくもない。それでIRON MAIDENはオリジナリティのあるバンドとして絶賛され、「HELLOWEENのスタイルに、イングヴェイ風のソロを入れ、QUEENSRYCHEの雰囲気を取り入れた」と形容できるSTRATOVARIUSの音楽にオリジナリティがない、と非難されるのは、どう考えても不公平である。

また、「アイディアの借用が大胆になってきた」というが、広瀬編集長の愛するRAINBOWだって、「Catch The Rainbow」は明らかにジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」のアイディアを借用しているし、イングヴェイ・マルムスティーンがALCATRAZZで作曲した「Jet To Jet」はそのRAINBOWの「Spotlight Kid」にそっくりである。こうしたことはHR/HMに限らず、音楽業界においては日常茶飯事であり、それをどこまで許容するかはむしろ受け手の問題である。STRATOVARIUSの音楽について広瀬氏がそのことを許容できないというのは、単に広瀬氏が彼らに対して好意的ではないということを意味しているにすぎない。

たしかにファンである私の目から見ても、STRATOVARIUSの音楽に目を見張るイノベーションはない。取り立てて新鮮味のあることはやっていないし、楽曲に驚異的な才能の煌きが感じられるということもない。しかし、丁寧な作り込みの感じられる楽曲は良心的であるし、何より、楽曲全体から感じられる独特の哀感は、このバンドの個性といっても過言ではないと思う。少なくとも、そうした哀感はHELLOWEENやイングヴェイの音楽には存在しないエレメントである。

むろん、音楽に対する評価などというものは結局主観的なものにしかなりえないし、ここで個性がある、個性がないなどと言っても水掛け論にしかならない。だから、これ以上この議論を続けるつもりはない。

「VISIONS」は先述した通り、ヨーロッパで大成功を収めた。本国フィンランドではヒット・チャートの5位まで上昇し、半年以上に渡ってTOP40にとどまるロングセラーとなった。イタリアのメタル雑誌では97年の年間ベスト・アルバムに選出されたという。この成功によって、これまでは日本主導だった彼らの人気は、完全にヨーロッパ主導のものに切り替わった。実のところ、このアルバムは日本でもオリコン・ヒットチャートの18位まで上昇する過去最高のヒットになっている。しかし、それでも来日公演が実現しなかったのは、この「事件」があったためだろう。

ただ、アルバムのセールス云々よりも、この事件がBURRN!誌においてもともと存在した英米のアーティスト偏重の傾向に拍車をかけるひとつの要因になったのではないかと思われることが、私には返すがえすも残念なのである(「STRATOVARIUSがトップ・バンドとみなされる欧州のシーンなんてロクなモンじゃない」という思いが広瀬氏に皆無だったといえば、きっと嘘になるだろう)。

周知の通り、STRATOVARIUSがこのアルバムを大ヒットさせ、HAMMERFALLがデビューを飾った97年以降、ヨーロッパではそれまでBURRN!誌が粘り強くプッシュしてきた伝統的なメタルの人気が復活する。しかし、同誌はそうしたヨーロッパのシーンの動きをほぼ黙殺、結果として一般的なHR/HMリスナーはヨーロッパのバンドを「マニア向け」のものと捉えるようになり、日本とヨーロッパの温度差を拡大させることになってしまった。

もちろんそれはBURRN!誌の取材力(主に制作費的な意味で)の限界、そして欧州のメタル・バンドにページを割くことでどれだけ部数が伸びるか、という費用対効果的な意味も含めての編集方針が主な原因であろうとは思う。ひょっとすると、STRATOVARIUSタイプの音楽をプッシュしてきた評論家、和田誠氏との間に存在すると言われていた確執なども関係しているのかもしれない。いずれにせよ、一連の事件がBURRN!編集部のSTRATOVARIUSに対する心証を著しく悪化させ、彼らの活躍=欧州・南米におけるメロディック・パワー・メタル・シーンの活況を日本に伝える妨げの一因となったことは疑いないだろう。

日本におけるほぼ唯一のHR/HM専門マス・メディアの後押しなくしては、この手のピュアなヘヴィ・メタル・バンドが正当な評価を勝ち取ることは難しい。自業自得という面もあるにせよ、結果的にこのことが日本におけるSTRATOVARIUSの存在と、欧州のメロディック・パワー・メタルを「マニア向けの音楽」に押し込めてしまったということは、彼らのファンであり、メロディック・パワー・メタルをこよなく愛する私にとって非常に歯痒い事実なのである。だからこそ、判官びいき的な感情もあり、世界の中心で、いや、BURRN! 編集部でこう叫びたいのだ。「STRATOVARIUSにもっと光を!」


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