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TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
THE MYSTERY OF TIME
86
ザ・ミステリー・オブ・タイム (2013)

マイケル・キスク(Vo)とカイ・ハンセン(G)の共演を実現させる画期的なツアーと、本国で過去最高の成功を収めたEDGUYの「AGE OF JOKER」のリリースを挟んで発表されたAVANTASIAの新章。マイケル・キスク、オリヴァー・ハートマン、アマンダ・ソマーヴィル、ボブ・カトレイといった「レギュラー・ゲスト」に加え、欧州メタル・オペラの先駆者であるAYRIONのアルイエン・アンソニー・ルカッセン(G)、SAXONのビフ・バイフォード(Vo)、PRETTY MAIDSのロニー・アトキンス(Vo)、MR.BIGのエリック・マーティン(Vo)、そしてジョー・リン・ターナー(Vo)やブルース・キューリック(G)と、楽曲に合わせた多くのゲストが参加し、物語の表情を豊かにしている。かつて「METAL OPERA」を標榜した本プロジェクトだが、本作は「ROCK EPIC」と銘打たれ、ここ数作の流れに則り、パワー・メタル一辺倒というよりは、より伝統的で幅広いHR/HMの技法を駆使して壮大な物語を描き出している。DrにURIAH HEEPのラッセル・ギルブロック、アートワークにPRAYING MANTISやMAGNUMなどを手掛けたロドニー・マシューズを起用したのも、よりクラシックなHR/HMへの志向を反映しているのかも。いずれにせよ、「王道感」と「安定感」に満ちたメロディック・メタルの秀作であることは間違いない。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
ANGEL OF BABYLON
87
エンジェル・オヴ・バビロン (2010)

同時発売の「THE WICKED SYMPHONY」と同様10分近い大作で幕を開ける、「THE SCARECROW」に始まる三部作の最終章。この#1がまたメロスパー魂を鼓舞する見事な疾走パートとサビ(このキャッチーなサビを歌うのもマイケル・キスクだ)を持っており、いきなりグイグイと作品世界に引き込まれる。続く力強いアップテンポな#2では聴けばそれとわかるイェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)のKeyソロが聴ける。錚々たるゲスト陣の中、正直シンガーとして傑出しているとは思えないジョン・オリヴァ(SAVATAGE, JOHN OLIVA'S PAIN)をわざわざ起用した#4は、聴いて納得、なるほど、これはジョン・オリヴァが歌って然るべき曲だ。こうしたゲストが映える曲をうまく絡めてストーリーに起伏をつけられるようになったことが、AVANTASIAプロジェクト開始当初と比べて飛躍的にトビアス・サメットの作曲家としての引き出しが増えたことを示している。あまりにもオーソドックスなハード・ロック・ソング#6から、郷愁を誘う穏やかなバラード#7、一昨年の来日公演にも帯同していた女性Voクラウディ・ヤンが歌うゴシック風味のヘヴィ・チューン#8の流れなどはメロディック・パワー・メタルを期待するファンにとってはややタルいかもしれず、アルバム全体としても「メタリック度」は低いが、個々の楽曲の質は高い。どうしてEDGUYの近作はこうならないのかな?(苦笑)。#10「Promised Land」はEP「Lost In Space」収録曲だが、ヴォーカルが一部変更されている。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
THE WICKED SYMPHONY
88
ザ・ウィキッド・シンフォニー (2010)

欧州各国で大ヒットを記録した「THE SCARECROW」の続編は、アルバム2枚に渡る大作となった。と言っても当初は単に前・後編を予定していたのが、次々と楽曲が生まれてきてしまった結果、2枚になってしまったとのこと。オープニングを飾るタイトル曲から9分超の大作で、イントロの素晴らしいオーケストレーションを聴いた瞬間に今回も傑作だ、と予感したが、まさにその通り。期待通りの充実したメロディック・メタル・アルバムだ。#2のような典型的メロディック・パワー・メタル・チューン(これをマイケル・キスクに歌わせてしまう所がニクいね!)をキッチリ押さえつつ、前作同様楽曲はバラエティに富んでおり、クラウス・マイネが歌う#4は本家SCORPIONSが演っても違和感がないほど王道のメロディアスなハード・ロック・アンセムに仕上がっている一方、ティム"リッパー"オーウェンズが歌う#3はアグレッシヴなメタル・チューンと、歌い手の個性にちゃんと合わせた楽曲の妙がトビアスの才能を雄弁に証明している。その他ヨルン・ランデ、アンドレ・マトス、ボブ・カトレイ、ラッセル・アレン等々、錚々たるメンツがヘヴィな曲からバラード、劇的な大作からオーセンティックなハード・ロックまで多様な楽曲を歌っているが、各人の歌声以上に楽曲の良さが耳に残る、ストーリーを無視しても単純に優れた楽曲集と断言できる快作だ。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
THE SCARECROW
89
ザ・スケアクロウ (2008)

トビアス(Vo, B)はこの「AVANTASIA」プロジェクトを「封印」しようと考えていたようだが、前2作に参加したオリヴァー・ハートマンとラルフ・シアステクに「こんな素晴らしいプロジェクトをやらないのは愚かだ!」と説得され、再びこのプロジェクトの新作を制作することを決意したのだとか。そう聞くと、単に2人が仕事欲しかっただけじゃないの、と思ってしまう僕って性格悪いですかね。まあ、きっかけはどうであれ、さすが天才トビアス・サメット、アウトプットは素晴らしい。前作に比べ光沢を抑えてマットな感触を増したサウンドが、前シリーズのような子供だましのファンタジーではなく、もっと人間の内面に踏み込み、パーソナルな「ファウスト」的ストーリーを語るという本作と前作との違いを表している。そういうと地味になったように聞こえるかもしれず、実際オープニングを飾る#1はややツカミの悪いミステリアスなミドル・テンポの曲である。しかし、ケルト風のメロディをフィーチュアした10分超の大作#2、この曲をマイケル・キスクに歌わせたのは確信犯でしょ、のHELLOWEEN風疾走曲#3、ポピュラリティに満ちた#4、女性Voをフィーチュアした洗練されたバラードの#5、先行シングルにも収録されていた躍動感あふれる#6、アリス・クーパーの個性的な歌声にピッタリの邪悪なムードが素敵な#7…と、いちいち挙げていたらキリがないほど充実した楽曲揃い。シングルとしては地味に感じた#11も、この流れで聴くと必然性がある。EDGUYの最新作ではやや失敗していた感のある「HMの伝統」と「コンテンポラリーな洗練」の融合がここでは見事に体現されており、トビアスの才能がやはり別格であったことを証明する傑作となっている。先述のアリス・クーパーをはじめ、ルドルフ・シェンカー(G:SCORPIONS)、エリック・シンガー(Dr:KISS)、ボブ・カトレイ(Vo:MAGNUM)と、前作よりワールドワイドな知名度の高いゲストの参加も「必然」であり、かつ「添え物」に過ぎないと思わせる、風格に満ちた傑作だ。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
LOST IN SPACE -PART 2-
75
ロスト・イン・スペース パート2 (2007)

タイトル曲の印象はPart 1のレビューに譲るが、こうして立て続けに聴くとちゃんと耳に残って、サビを口ずさめてしまうあたり、やっぱりキャッチーな曲なのだろう。#3はULTRAVOXのカヴァー。かつてEDGUYでも彼らの「Hymn」をカヴァーしていたことを考えると、ファンなのかもしれない。確かに叙情的な曲が多くて、僕も好きだ。#5はフレディ・マーキュリーのカヴァー。既に神格化されている彼の曲をカヴァーするというのはなかなか大胆不敵だが、なかなか様になっている。これでPart 1と合わせて都合4曲目のカヴァーだが、1曲たりとてアメリカンな曲をカヴァーしない所は好感が持てる。ベタさと渋さのバランスもなかなか絶妙で、カヴァー曲の多用をあまりクリエイティヴな行為だと思わない僕でも納得せざるを得ない。#6は表題曲をトビアス、サシャ・ピート、ミロ、アマンダ・ソマーヴィルの4人でアコースティック・ジャムっぽいスタジオ・ライヴ形式にて録音したものだが、もうちょっと元気にプレイしてもよかったのではという気も。いずれにせよ、ファンであればPart 1と合わせて所有しておくべき一枚でしょう。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
LOST IN SPACE -PART 1-
77
ロスト・イン・スペース パート1 (2007)

続編の制作がアナウンスされた「AVANTASIA」プロジェクトの先行シングル。同じ曲をリーダー・トラックに2種類の商品が制作され、こちらはパート1。EDGUYの最新作が個人的にはやや不完全燃焼な仕上がりだったので、あまり期待しないようにしてはいたが、悪い予感が的中してしまった。およそトビアスらしくないというか、Aメロなんてメタルらしからぬ、「U2になりたいの?」って感じの、個人的には好ましくない意味でポップな曲。#2はABBAのカヴァーで、数多ある名曲の中からあえて過去HELLOWEENがカヴァーしたのと同じ曲をチョイスしているというのが挑戦的。#3はようやくトビアスらしい勢いのあるメロディックなメタル・チューンで、ひと安心。#4はボブ・カトレイ(MAGNUM)が歌うバラードで、さながらミュージカルのクライマックスで歌われそうな、劇的なコーラスによる盛り上がりが素晴らしく、本EP中のハイライトと言える。#5は曲名通り、前作のメインテーマのメロディをオーケストラ・サウンドで演奏した序曲的な小曲。こういうのってアルバムのイントロで使うべきなのでは? #6の「Ride The Sky」という曲名に、「すわ、HELLOWEENのあの曲か!?」と色めき立ってしまうのがメロスパーの悲しい性だが、これは70年代に活躍した、ドイツのちょっとプログレッシヴなハード・ロック(あるいはちょっとハードなプログレッシヴ・ロック)・バンド、LUCIFER'S FRIENDのカヴァー。ドイツ人ならではの、なかなかマニア心をくすぐる選曲だ(Voはエリック・シンガー)。正直肝心のタイトル曲が微妙なので印象はイマイチだが、PVやメイキング映像、壁紙などもエンハンスト仕様で収められ、商品としては充実している。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
THE METAL OPERA PT.II
87
ザ・メタル・オペラ パート2 (2002)

前作がドイツのチャートで35位まで上昇する成功を収め、欧州では非常に注目されていた続編の「PT.II」。制作自体は前作と同時期に終了していただけあって、内容的には前作とまったくブレのない、ドラマティックなメロディック・パワー・メタル作品である。疾走曲からバラードまで、本作も楽曲は粒揃いだが、なんと言ってもハイライトは1曲目からいきなりの14分を超える大作、「The Seven Angels」。前作に引き続き参加している豪華なゲスト・シンガーが車懸りの如く登場する様は圧巻で、この曲があまりにも「濃い」ため、エンディングがややあっさりしているように感じられるほど(笑)。本作も本国ドイツでチャートの17位を記録する大ヒット作となり、御大カイ・ハンセンから「これこそ『KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART 3』だ!」という「お墨付き」まで頂戴する高い評価を得た。ただ、個人的には、トビアス・サメットの創造する音楽にみなぎる、唯一絶対神がいる国の音楽ならではのオプティミズム(それは同時にトビアスという人間が自身の音楽に絶対的な自信を持っていることの現われでもあると思う)が、僕の感性に今ひとつフィットしないのもまた事実で、クオリティ的にはまさに「完璧」で「非の打ち所がない」にもかかわらず90点以上をつけるのを躊躇ってしまう。実はその辺は結構みんな感じていて、日本ではあまり盛り上がらなかった理由は単純に「フィーリング」の問題なんじゃないかと個人的には思っていたりして。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA
THE METAL OPERA
87
ザ・メタル・オペラ (2001)

EDGUYのフロントマン、トビアス・サメット(Vo, Key)がかねてから構想していた、様々なシンガーを迎えたコンセプト・アルバムの制作を実現するためのプロジェクト第一弾。Gにヘニユ・リヒター(GAMMA RAY)、Bにマーカス・グロスコフ(HELLOWEEN)、Drにアレックス・ホルツワース(RHAPSODY)という面子を基本メンバーに、アルバムを通じて語られるファンタジックなストーリーのキャラクターごとにシンガーとして参加しているのはカイ・ハンセン(GAMMA RAY)、ティモ・トルキ(STRATOVARIUS)、アンドレ・マトス(元ANGRA)、オリヴァー・ハートマン(AT VANCE)、ロブ・ロック(元IMPELLITTERI)、シャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)、デヴィッド・ディフェイ(VIRGIN STEELE)という豪華メンバー。そして今回何より話題なのは、"アーニー"名義でかのマイケル・キスク(元HELLOWEEN)が参加していること。久々にメロディックなメタル・チューンを歌う彼の伸びやかなハイトーンを聴くと、やはり彼の本領はここにある…と思ってしまう。音楽的には一転の曇りもない王道のメロディック・パワー・メタルで、序曲的な曲や小曲の挿入によってアルバム全体にドラマティックな起伏が強調されていることを除けば、正直EDGUYとの違いはほとんどない。しかしこれだけのゲスト(しかも先輩ばかり)を招き、レーベルのオーナーの髪の毛が薄くなるほどの(トビアス談:笑)費用をかけて制作しただけあって、メロディック・パワー・メタル・ファンであれば必ず楽しめるハイ・クオリティな作品になっている。

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