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AVENGED SEVENFOLD
HAIL TO THE KING
84
ハイル・トゥ・ザ・キング (2013)

前作「NIGHTMARE」が全米No.1を記録し、名実ともにメタル・シーンの頂点に立った彼らの6作目のフル・アルバム。そして本作は良くも悪しくもその地位に相応しい貫禄を感じさせるアルバムである。まず、音楽的にシンプルになり、王道感が増している。そして、これまで割と様々なジャンルの音楽のエッセンスを取り入れたハイブリッドなサウンドを聴かせていたのが、基本的にはブラック・アルバムの時期のMETALLICAにIRON MAIDENを起源とする欧州メタルのメロディ・センスを取り入れたかのようなスタイルに一本化されており、音楽的にこれまでで最も統一感がある作風である。楽曲もミドルテンポのものが主体で、これまで存在した、日本のメロディック・パワー・メタル・ファンが彼らに興味を持つきっかけになった疾走パートなどは一切ない。そのことについて不満を感じる向きもあるかもしれないが、英米では「B級臭さがなくなった」と受け止められることだろう。これがレヴを失って、悪く言えばヒネリのない「シンプルな路線にならざるを得なかった」のか、自ら「こうあるべき」として選び取った方向性なのかによって受け手としての印象は異なるが、楽曲やサウンドのクオリティは高い次元で安定しているし、バンドの資質にマッチしているのはこういう作品だろう。新世代メタル・バンドの代表たるに相応しいメジャー感のある力作だ。

AVENGED SEVENFOLD
NIGHTMARE
81
ナイトメア (2010)

09年末に起きた、ジェイムズ"ザ・レヴ"サリヴァン(Dr)の突然の死という事件を経て発表されたアルバム。レヴの死によって空いたDrパートをDREAM THEATERのマイク・ポートノイがプレイしていることでも話題。全体的にメンバーの死という悲劇が影響を及ぼしたのか、カラフルな作風だった前作とは打って変わってダークな作風である。単にシリアスな表現に向いていたということなのかもしれないが、これまで以上にオーソドックスなヘヴィ・メタルの要素が濃厚で、以前から影響が強かったMETALLICAはもちろん、時にJUDAS PRIESTやIRON MAIDEN、まるでSTRATOVARIUS? な印象さえ与える構築感の高いパートが随所に登場し、本来であれば私のような古典的HMを愛するクチには好ましい作風である。…しかし、残念ながら本作に関して言えば必ずしも満足の行く仕上がりではない。レヴを喪った所為なのか、単純に楽曲のクオリティが往々にして耳年増な伝統的HR/HMファンを納得させるレベルに達していないと言ってしまえば身も蓋もないが、変に行儀よくなってしまい、これまでの彼らの作品にあった良い意味での音楽的ヤンチャさが影を潜めてしまっているのが物足りない。シンガーの資質がこういうシリアスなサウンドに適性があるとは思えないだけに、次作では今回の悲劇を乗り越え、もっと吹っ切れた作品を作ってくれることを願いたい。

AVENGED SEVENFOLD
AVENGED SEVENFOLD
87
アヴェンジド・セヴンフォールド (2007)

ヒットした前作の、アメリカのバンドらしからぬクサクサのメロディック・パワー・メタル路線が彼らのマイブームの発露だったのか、「これからはコレが来るでしょ」という読みに基づく戦略だったのかは不明だが、注目作となる本作では欧州的なクサさがだいぶ抑えられ、楽曲の骨格と質感は彼らの本質と思しき90年代を通過したアメリカのヘヴィ・ロック・サウンドになっている。パイプオルガンによる欧州クサメタル風のイントロから、NU METAL的なヴァースに移行する#1に象徴されるヨーロッパ的要素とアメリカ的要素の折衷ぶりは思いのほか完成度が高く、全体的には私の嗜好から距離のある音楽スタイルであるにもかかわらず、随所に存在するメロディック・メタル的要素がフックとなって惹きつけられる。正直私は前作時点では彼らのことをハイプだと思っていたし、彼らのケレン味の強いアピアランスや、微妙なライヴ・パフォーマンスは世間的にもディスられる要素満載で、なまじ売れてしまった分、将来は結構厳しいのではないかと思っていた。しかし、現代カントリー風味のバラード#10に漂うメジャー感は凡百のヘヴィ・ロック、ましてやメタル・バンドにはなかなか醸し出せない堂に入ったものだし、ヘヴィなサウンドの中に巧みにピアノやストリングスを織り込む手腕、#9のような映画音楽を思わせるユニークな楽曲を産み出す創造性などは、彼らがコアなフィールドにとどまらない音楽的才能を備えたバンドであることを証明している。Voの声質をはじめ、彼らの資質が前作のような類型的なメロディック・メタル・サウンドにないことは明らかで、本作のサウンドこそが彼らの音楽スタイルのひとつの完成型であろうし、世間的な評価によっては今後のシーンに対する指針にさえなりうる一枚だ。

AVENGED SEVENFOLD
CITY OF EVIL
83
シティ・オブ・イーヴル (2005)

アメリカはオレンジカウンティ出身バンドのメジャー・デビュー作となる3rdアルバム。日本では本国に約1年遅れてのリリースとなり、国内リリースの時点で本国では既にゴールド・ディスクを獲得するヒット作となっている。この作品以前はパンク/ハードコア色の強いサウンドで、一般的にはその手のバンドとみなされているが、メタル・ファンの間でも話題を呼んでいるそのサウンドは、極めてメタリック。それも、いわゆる「ジャーマン・メタル」と呼ばれるような類の、これまでアメリカからは出てこなかったタイプのメロディックなメタル・サウンドであることが注目の原因である。僕自身その評判を聞いて買ってみたクチだが、#1のサビを聴いて納得、たしかにこりゃジャーマンだ。とはいえ、全体的なリフの組み立てにはMETALLICAからの影響が色濃く、VoのスタイルはむしろGUNS N' ROSESやAEROSMITHなどのロックン・ロール・バンドを思わせるナスティなものだ。そのため、Keyなども取り入れた小ぎれいなサウンドを好む僕には今ひとつハマりきれない部分もあるのだが、アルバム後半、ドラマティックな展開を持つ長めの楽曲群にはなかなか心惹かれるものがある。サウンドの質感はメロコアとメタルの中間といった感じだが、テクニカルなギター・ソロやツイン・リードの絡みなど、演奏は完全にメタル。こういう注目バンドがメジャー・デビューをきっかけにメタル色を強めた、というのは興味深い事実だし、彼らの成功がきっかけでメロディック・パワー・メタルに注目が集まるとしたらそれは喜ばしいことだと思う。


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