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BULLET FOR MY VALENTINE
TEMPER TEMPER
81
テンパー・テンパー (2013)

マット・タック(Vo, G)のサイド・プロジェクト、AXEWOUNDの活動や、これまで所属していた「JIVE」レーベルの解散に伴う「RCA」への所属変更を経て発表された4作目のフル・アルバム。前作が初登場全米3位に輝く成功を収めただけに、順当に前作のプロデューサーであるドン・ギルモアが再び本作も手掛けている。そして音楽的な方向性も順当にさらにソング・オリエンテッドなスタイルに移行しており、前作以上にモダンでコンパクトな作風になっている。個人的にはアグレッションよりメロディを重視するリスナーなので、そのこと自体は構わないのだが、本作に関して言えばこの「順当さ」にはちょっと「守りの姿勢」を感じてしまったというのが正直な所。Facebookのアンケート結果を元に制作したという、「THE POISON」収録の人気曲「Tears Don't Fall」の続編#10も、言ってしまえば既存のファンに対する「媚び」で、そんなことをするのは落ち目になってからでいい。先行シングルに選ばれた#8は2分台のシンプルな曲だが、本作で一番耳を引くのはツイン・ギターの絡みだったりするので、このバンドの場合過度のシェイプアップは自身の魅力をスポイルすることになりかねないような気がする。飛躍的な成長や革新が難しいのであれば、せめて前作並みにメロディを充実させてほしかった。客観的に見て質が低いとは思わないが、期待に応えた作品とは言い難いという意味で凡作。

BULLET FOR MY VALENTINE
FEVER
89
フィーヴァー (2010)

前作が本国のみならずアメリカでもTOP5に入る大成功を収めたBFMVのサード・アルバム。プロデュースにLINKIN PARKやGOOD CHARLOTTE、アヴリル・ラヴィーンなどを手掛けた2000年代ロックの大御所、ドン・ギルモアを迎えている。この人選や「よりハード・ロック寄りな作品になる」という前評判を聞いて「変に売れ線に走ってスベってしまうのでは…」と危惧していたが、全くの杞憂だった。もはやエモだメタルだといった細かいジャンル分けなんかどうでもいいんだよ、と言わんばかりのスケール感とポピュラリティを身に付けたそのサウンドは有無を言わせぬカッコよさ。いや、結果として体現されているこの音は文句なしに「カッコいいメタル」だ。私は結構保守的なメタル・リスナーで、このバンドについても「悪くないけど、フェイクなのでは?」という疑念を持って見ている部分があったが、本作を聴いて完全に脱帽した。常に哀愁と翳りをたたえつつ、時にアグレッシヴに畳みかけ、時にメロウに聴かせる楽曲の完成度は、#1「Your Betrayal」から最後までテンションが落ちることはない。正直ここまでのポテンシャルを持ったバンドだとは思っていませんでした。「新世代メタルの旗手」の座を不動のものにする名作。これでメタルはあと10年戦える。

BULLET FOR MY VALENTINE
SCREAM AIM FIRE
85
スクリーム・エイム・ファイア (2008)

前作発表後、成功の代償としての過密スケジュールによる過労のため、マシュー・タック(Vo, G)が入院していくつかの公演をキャンセル。扁桃腺を摘出した際に医師から「もう二度と以前のようには歌えない」と宣告され、一時はマット自ら新しいVoを迎えることを提案する…という波乱のドラマを経てリリースされた全世界注目のセカンド・アルバム。言われてみればなんとなくマットの声質が変わり、唱法も変化したように思えるが、特にそのことがマイナスになってはいない。リード・ギターの旋律が楽曲の印象を決定していた前作に比べ、本作では全体的にメタル然とした骨太なギター・リフを中心に組み立てられた楽曲が目立つ。その結果、サウンド全体がよりソリッドかつタイトに引き締まって、個人的に気になっていたエモ/スクリーモっぽさは減退した。マットの唱法も時折ジェイムズ・ヘットフィールド(METALLICA)を彷彿させ、前作で気になった「ナヨナヨ感」はかなり払拭されている(とはいえ、依然メタルのヴォーカルとしては「軽い」歌声だが)。80年代ポップ・メタルをメロコア化したような#3、スローでメランコリックな#8、コマーシャルと言ってもいい明るいメロディを持つバラード風の#11などを配することで楽曲のバラエティが豊かになり、アルバムのメリハリが強化されたのは好ましい。本作でも「代表曲」を生み出すには至っていないように感じられるが、相変わらず楽曲の平均点は高く、彼らに対する評価が実体を伴わないものではないことを証明するアルバムに仕上がっている。

BULLET FOR MY VALENTINE
THE POISON
84
ザ・ポイズン (2005)

デビューEPで英国KERRANG!誌の最優秀新人賞に選出され、各地のフェスに引っ張りだこの存在となったBFMVのファースト・フル・アルバム。IRON MAIDENのメンバーをして「ブリティッシュ・メタルの未来」とまで言わしめる、話題のサウンドをチェックしようと購入し、聴いてみた。ドラマティックなイントロ#1に「おお、なかなか良さそうじゃん」と思ったのも束の間、#2に切り替わった瞬間に轟く粗暴な怒号にちょっと萎える。気を取り直して聴き進めると、やや複雑な感想を抱いてしまった。随所に登場するメロディックなリードや、メランコリックなアルペジオには文句なしに心惹かれる。Voスタイルの基本がメタルコアっぽいスクリームであることは、好みではないものの既に慣れているので気にならない。ただ、クリーン・ヴォーカルのパートで聴かれる歌声があまりにもエモ/スクリーモっぽく、サウンドも、スタイル的に似ているアメリカのメタルコアや北欧のメロデスなどと比べ、重さ・音圧がそれほどでもない(だから聴きやすい)ために「これはそもそもメタルなのか」という疑念が拭えない。まあ、きっとこのサウンドはエモ/スクリーモのファンからすればメタリック過ぎるくらいメタリックなはずで、メタル側からすればこれは「仲間」として受け入れ、「メタル」というジャンルの裾野を広げた方が将来的にも好ましいはず。突出したキラー・チューンこそないものの、楽曲の平均点はおしなべて高く、どの曲にもフックがちゃんとある。今後の方向性に注目すべき新人だ。

BULLET FOR MY VALENTINE
BULLET FOR MY VALENTINE
75
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン (2005)

97年にハイスクールで結成されたJEFF KILLED JOHNというバンドを母体とし、04年に現在のバンド名に改名した、平均年齢24.5歳というイギリスはウェールズ出身の4人組のデビューEP。ウェールズといえば近年ではLOST PROPHETSやFUNERAL FOR A FRIENDなどが有名で、このバンドが浮上してきたのも、そういった先達バンドに通じる要素があったから、という面は否定できないだろう。ただ、前掲の2バンドに比べるとこのバンドは格段に「メタル度」が高く、サビでのメロディックなクリーン・ヴォーカル・パートこそエモ/スクリーモ的ながら、楽曲全体のタッチとしてはむしろアメリカのメタルコアなどに近く、本人たちも公言するようにIRON MAIDENやMETALLICAなどからの影響も顕著。楽曲は3〜4分台とコンパクトで、ギター・ソロなども控えめだが、翳りのあるメロディを巧みに使用して、攻撃的な中にドラマティックな印象を与える手腕はなかなか見事で、『KERRANG!』『MUSIC WEEK』『NME』『METAL HAMMER』といった音楽誌で絶賛され、たちどころにメジャーの「Sony/BMG」との契約が成立した(本作はイギリスのラウド系インディーズレーベル「Visible Noise」からリリースされている)のも頷ける。オリジナルは5曲入りだったが、日本盤には本国で本作の後にリリースされたシングル「4 Words」、およびエンハンスト仕様でPVが2曲追加収録されている。

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