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HEAVENLY
CARPE DIEM
85
カーペ・ディエム (2009)

Drが元FAIRYLANDのピウィーに交代。前作は(彼らにしては)へヴィでダークな要素が見受けられたことが賛否両論を呼んだが、本作では1曲目であるタイトル曲のリフにこそそうした要素が残っているが、全体的にはかなり明るくなっている。前作を「陰」とすれば、それと対をなす「陽」の作風で、ハッピーなメロディック・パワー・メタルを好む人には受け入れられやすいだろう。ダイレクトにQUEENを彷彿させる#3、#5あたりもアルバムのポジティヴな印象を強めている。冒頭#1からトビアス・サメット(EDGUY, AVANTASIA)の歌声が聴こえてきそうで、本作の発売に先行して公開された#6はモロにGAMMA RAYと、相変わらずパクリが目立つが、これがいつもながら実に見事に「使いこなして」おり、どこかで聴いたような、という違和感を快感が上回る。#8は年末のリリースを意識してか(?)ベートーベンの「第九」のあのメロディを取り入れた曲。テンポ的には、サードまでの時折起伏は設けつつも疾走を基本にした作風から、逆に起伏をつけるために曲によっては疾走ビートを用いる、という前作のスタイルを踏襲。スピード狂のファンには物足りないかもしれないが、個人的には曲がいいので気にならない。最近ここまで楽曲の充実したピュアなメロディック・パワー・メタルを演じてくれるバンドは貴重なだけに、今さらながらVoのヘナチョコぶりが本当に惜しい。アートワークはこれまでKAMELOTやAXXISなどを手掛けたデレク・ゴアズの手によるもの。

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VIRUS
85
ヴァイラス (2006)

前作発表後、3人のメンバーが脱退、所属していた「Noise」レーベルからも離れ、心機一転を余儀なくされた彼らの4作目となるアルバム。実際、音楽性に若干の変化が見受けられ、全体的にヘヴィさを増したギター・リフ(と、言っても決してダウン・チューニングによる90年代的なヘヴィさではない)が、なんの心構えもなく#1を耳にしたリスナーなどには違和感を与えるかもしれない。#3などはさながらスラッシュ・メタルのようでさえある。しかし、ベン・ソット(Vo)は、一層カイ・ハンセン的になった歌唱はともかく、メロディ・メーカーとしての才能にはやはり見るべきものがあり、全ての楽曲に流れるキャッチーで印象的な旋律は、変化による違和感を払拭してあまりある。新境地といえる、ライナーにあるようにEUROPEの「The Final Countdown」などを思わせるキャッチーな#2も秀曲。新メンバーの演奏が旧メンバーよりも安定感があり、やや冗長だった前作に比べてコンパクトに引き締まった楽曲もあって、全体的に逞しくなったように感じられるのは個人的に好印象。たしかにいわゆる疾走パートは減少したので、彼らの支持母体であるメロスパーたちには賛否両論かもしれないが、速い曲もあるし、音楽の持つ勢いは充分。音楽性の変化に合わせてジャケットの雰囲気もダークなものに変えたのかもしれないが、せめてジャケットくらいメロスパー好みのカラフルでファンタジックな路線をキープしたほうが、従来のファンの違和感を軽減できてよかったのではないだろうか。

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DUST TO DUST
84
ダスト・トゥ・ダスト(2004)

前作が日本のメロディック・パワー・メタル・ファンから絶大な支持を得た彼らの3rdアルバム。今回はヴァンパイアになってしまった男を主人公に、3部構成のコンセプト・アルバムとなっている。そのストーリー性を表現するためであろうが、前作に比べ、アルバム全体はもちろん、楽曲単位で見ても起伏と展開が多くなり、ドラマ性が向上。ただ、前作のひたすらキャッチーなメロディがストレートに疾走するタイプの楽曲に快感を覚えていたようなファンには、リズム・チェンジの多い本作の楽曲は素直に「ノレない」ため、一種のフラストレーションを感じるかもしれない。とはいえ随所に疾走パートは存在するし、依然としてクサいメロディ満載ではあるが。ただ、大半の楽曲が6分以上で、アルバム全体で70分を超えるという長さは、個人的にはやや冗長な印象。あと、このドラマティックな音楽を表現するには、やはりVoが弱い。もともとカイ・ハンセンとアンドレ・マトスを足して2で割ったようなシンガーだったが、本作では一層カイ・ハンセン的な歌いまわしを多用するようになり(ややアンドレ・マトス寄りだった前作における歌唱をB!誌のF記者に「フニャチン」と言われた反動でもあるまいが:笑)、個人的には壮麗なサウンドとアンマッチを起こしているように感じられる。相変わらずメロディ作りに関しては素晴らしいセンスを感じさせるので、それを素直に出していくような方向性を期待。日本盤ボーナスの「Dust To Dust」日本語バージョンは…J-POPに慣れた身には、敬語の歌詞に違和感が。

HEAVENLY
SIGN OF THE WINNER
89
サイン・オブ・ザ・ウィナー(2001)

こりゃー化けたね。凄いイイよ、コレ。いろいろな所で指摘されている通り、どっかで聴いたようなフレーズや展開が頻出するものの、とにかく曲が良くて全て許せてしまう。思わず頬が緩んでしまうクサいメロディが、期待通りのお約束な展開を見せながら疾走して行く様は、いわゆる「メロスピ」が好きな人なら絶対満足の行くツボの突きっぷり。プロデューサーがHELLOWEENを手掛けたトミー・ハンセンに代わったことが功を奏したのか、サウンドがシンフォニックで優美な印象になり、メロディの良さを引き立てている。実はこの方向性はFREEDOM CALLと全く同じなのだが、曲の良さはこのHEAVENLYに軍配が上がる。1曲目のイントロが4分以上もあり、2曲目のイントロもドラマティックで長いので、#1の必要性は「?」だが、なかなかカッコいい曲なのでこれはこれでアリかな。どの曲もメロディアスかつドラマティックで素晴らしいのだが、#6の「The Angel」はやたらと「You're the angel, You're the angel」というクワイアが繰り返される一風変わった小曲で、日本のマニアの間では「四時エンジェル」などと呼ばれて愛でられることになった(?)。幾多のメロディック・パワー・メタル作品をリリースしてきたビクターがあえてオビのジャンル表記に「劇メロ」と書きたくなったのも頷ける、この年一番メロスパーたちの心をとらえた一枚。

HEAVENLY
COMING FROM THE SKY
74
カミング・フロム・ザ・スカイ(2000)

NOISEレーベルが送り出すメロディック・パワー・メタルのニュー・カマー、というと、「ああ、また新手のジャーマン・メタルね」と思ってしまうが、このバンドはなんとドイツの歴史的なライバル国であるフランス出身。しかし、そのサウンドはどこから聴いても「ジャーマン・メタル」のそれで、実際メンバーはHELLOWEENやGAMMA RAYを聴いてバンドを始めようと考えたらしい。彼らがデビューしたのは、NOISEレーベルがインターネット上で行なったアマチュア・バンドのコンテストにデモを送り、優勝したのがきっかけとのこと。本作のプロデュースを手掛けているのはIRON SAVIORのピート・シルークだが、彼を起用したのは、当初サシャ・ピートを起用しようとしたら、ギャラが高くて断念した結果だとか。ちなみに#4「Time Machine」にはカイ・ハンセン御大がVoでゲスト参加…とレビューに書くネタには事欠かないバンドだが、肝心の音楽のクオリティは正直まだまだ。全体的に曲が未整理で、楽曲、ひいてはアルバムの印象が冗長なものになってしまっている。6〜7分台の長めの楽曲が多いが、もう少しシェイプアップするべきだったのではないか。IRON SAVIORっぽい重めの無骨なリズムの録り方もこのバンドに合っているとは思えないな。よく聴けば、随所に心惹かれるクサいフレーズやメロディがちりばめられていて、次作での大化けを予感させる要素もあるんだけどね。

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