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IRON MAIDEN
THE FINAL FRONTIER
79
ファイナル・フロンティア (2010)

ブルース・ディッキンソン(Vo)自らが操縦桿を握る専用飛行機で5大陸をツアーした「SOMEWHERE BACK IN TIME」ツアー、そしてそのツアーを収録したあまりにも感動的なドキュメンタリー映像作品「FLIGHT 666」のリリースを経て発表された、デビュー30周年を迎えて初となるアルバム。収録曲10曲のうち6曲が7分以上という大作志向は前作同様。前作はバンド史上初となる全米TOP10入りを記録した「成功作」なわけだから、その「勝利の方程式」を変える必要を感じなかったとしても無理はない。しかし、正直な所最近音楽に対して集中力が不足気味な私にとって、長尺な曲の多い本作を理解するのは容易なことではない。カタログ中でも最も重厚な作風だった前作に比べればやや明朗に響くパートが多いのが個人的には救いだが、やはりこの似たような曲調の長い曲を75分以上に渡って聴き続けるのは疲労感が伴う。オープニング曲のツカミが悪いのも悪印象。ケヴィン・シャーリーによるライヴっぽい(しかし籠り気味の)サウンドは相変わらずで、「作り込まれた楽曲を作り込まれていないサウンドで聴かせる」というのがブルース復帰後の彼らの個性になってしまっているが、個人的にはサウンドも作り込んだほうが楽曲の持つドラマ性が伝わりやすいと思う。とりあえず1曲目のイントロ的な「Satelite15」と「The Final Frontier」はトラック分けしてほしかった。

IRON MAIDEN
A MATTER OF LIFE AND DEATH
78
ア・マター・オブ・ライフ・アンド・デス〜戦記

CDを買って、いつも通りiPodに取り込んだら、ジャンル名が「Metal」ではなく「Rock」と登録されていたのは、「もはやメイデンはメタルなどという狭いフィールドにいるバンドではない」という意味合いか、それともケヴィン・シャーリーのプロデュースによるスタジオ・ライヴ録音の生々しい音作りがあまりメタルっぽくないからか。そんな本作ではあるが、曲調的には至極メイデンらしい楽曲の揃ったアルバムで、その点は喜ばしいものの、あまりにも過去の楽曲で聴いたことのあるような展開・メロディが多いため、手放しでの絶賛はいたしかねる。僕はアーティストが以前と同じようなタイプの楽曲を出すこと自体は否定しないが、それが許されるのは、過去の同タイプの曲に負けないくらいカッコいい曲が書けたときに限られると思っている。然るに、本作における歌メロやリード・ギターのメロディは、彼らの過去の名曲が持っていたインパクトとは比べるべくもない。そして楽曲が全体的に長い(半数以上の曲が7分以上!)上、アルバム自体も70分を超える大作のため、正直途中でダレることは否めない。この長さは往年のプログレッシヴ・ロックを意識したものらしいが、毎度お決まりの「静から動へ」というワンパターンな展開は、およそプログレッシヴという言葉の本来の意味からはかけ離れているように思う。長けりゃいいってもんじゃないでしょ。前作に続きジャケットのデザインもダサいなぁ…。


IRON MAIDEN
DANCE OF DEATH
82
死の舞踏 (2003)

本作発売前に入手した、ドイツのロック・フェスティバルのステージを収録したブート映像に納められていた#1「Wildest Dreams」を観てなんとなく悪い予感はしていたが、その悪い予想は見事に当たってしまった。アメリカのラジオを意識したとしか思えないシンプルなロック・チューンである同曲は、全くもってメイデンらしくなく、そんな曲をリーダー・トラックとしてオープニングに配した本作は、いささかメタリックな緊張感が不足した作品となってしまっている。メロディックな#2「Rainmaker」や、アイルランド舞曲風の中間部が印象的なタイトル曲#5「Dance Of Death」を筆頭に、力強いサビと、彼ららしいツイン・リードが印象的な#3「No More Lies」、アルバムのラストを飾るムーディーなバラードの#11「Journeyman」と、なかなかいい曲もあるにはあるが、キラー・チューンというほどでもない。前述の#1をはじめ、#4、#6と言った彼らにしては明るめな、キャッチーにロックする曲の替わりにガツンとメタリックな曲を入れてくれればだいぶ印象も違ったと思うのだが…。きっと、ニコ・マクブレインがもう激しいメタル・ドラムに耐えないんだろうなぁ…。もともと2バスなどは苦手だったらしいし。前作に引き続きケヴィン・シャーリーによるプロデュースのもとライヴ・レコーディング形式が採られているが、構築感の強い彼らの音楽にライヴ・レコーディングが向いているとは思えない。ドラマーとプロデューサーを替えない限り、もはや「メタリックなIRON MAIDEN」は戻ってこないのかも。

IRON MAIDEN
BRAVE NEW WORLD
83
ブレイヴ・ニュー・ワールド (2000)

ブルース・ディッキンソン(Vo)復帰第一弾。彼の復帰決定と共にブレイズ・ベイリー時代は「黒歴史」として闇と記憶の彼方に葬られてしまったため、ほとんど「再結成」に近い大騒ぎとなった。ブルースの大仰な歌唱によってドラマティックなスケール感が一気に回復し、その点は素直に喜ばしい。シンプルなリフで畳み掛け、力強いコーラスと、ドラマティックなエンディングで盛り上げる先行シングルの#1を聴いたときは、僕でさえ心のガッツポーズをとったものだ。が、アルバム1枚通して聴くとイマイチ心が躍らない。大作志向はこのバンドの常だが、本作は#2以降その手の曲ばかりが並び、それぞれの曲もアグレッシヴなパートよりムーディーに「聴かせる」パートが多いこともあってインパクトに欠けるのだ。#1と似たサビを持つ#3のタイトル曲や、#9など名曲級の曲もあるが、個人的には、このケヴィン・シャーリーによる生々しいサウンドであれば、こういう構築感の強いプログレッシヴな楽曲群より、シンプルでストレートなサウンドの方がマッチするはずだし、せめてあと1、2曲スピード感のある攻撃的な曲があったほうが、作品が締まったと思う。なんか皆ブルースが戻ったことで浮かれ気味で絶賛していたけど、彼らに期待されるクオリティはこんなものじゃないでしょ。

IRON MAIDEN
VIRTUAL XI
77
バーチャル・イレブン (1998)

前作におけるブレイズ・ベイリーの歌唱に対する不評を意識したのか、多少なりとも彼のスタイルに合わせた楽曲作りがなされたと思しきアルバム。前作においては「ブルース・ディッキンソンの物真似に失敗しているアマチュア・シンガー」のように聴こえてしまっていたヴォーカルが、どうにか違和感なく聴けるようになっている(むろんこれは本人の努力もあることだろう)。しかし、その結果楽曲にメイデンらしさが不足し、物足りなさを感じてしまうのも事実。#1のようなシンプルな突進チューンはなかなかサマになっていてカッコいいが、#2のような70年代ハード・ロック的な曲は正直彼らに望む音楽性じゃないな。いずれにせよ、強く印象に残るのは、#5の中間部とか#7の後半のテンポアップするパート、#8の間奏部など、メイデンらしい叙情的なリード・ギターのフレーズを堪能できるパートで、それらは言ってしまえば、彼らが元々持っていた美点。ブレイズの加入によって新たな魅力が生まれたと思えないのはちょっと淋しいね。全8曲というボリュームのなさは、まさかブレイズの歌を長時間聴かせることがバンドにとってマイナスになると判断したから短くまとめたわけじゃないよね?(笑)

IRON MAIDEN
THE X FACTOR
80
X ファクター (1995)

謎だ。どうしてスティーヴ・ハリス(B)は新Voにこのブレイズ・ベイリーを選んだのか。まあ、精悍な面構えはなかなかフロントマンとしての見栄え的には悪くないが、歌唱スタイルがバンドに全く合っていない。WOLFSBANE時代には誰一人彼のVoについて悪く言うものはなかったが、このアルバムにおける歌唱については、ほぼ十人が十人不評を述べた。しかも多くのIROM MAIDENファンにとって初のブレイズ・ベイリー体験となる#1「Sign Of The Cross」がまたよりによって彼のスタイルには全く不向きな、テクニカルな歌唱を必要とされる大作チューンで、彼の大味なVoが恐ろしくマヌケに響く。スピード・チューンの#3「Man On The Edge」や、劇的な間奏パートが鳥肌モノの#7「Judgment Of Heaven」をはじめ楽曲の質は当然凡百のメタル・バンドとは比較にならないほど高い。いつになくプログレ指数の高い、このシリアスな楽曲世界はきっとブルース・ディッキンソンが歌い上げれば大層魅力的なものになったと思われるだけに、非常に惜しい作品である。ブルースが歌えばプラス4、5点は堅かった。て言うか、こういうシンガーを迎え入れるのであればこのような大作志向の作風ではなく、ポール・ディアノ在籍時のようなラフでアグレッシヴなヘヴィ・メタル路線を採るべきではなかったのだろうか。

IRON MAIDEN
FEAR OF THE DARK
90
フィア・オブ・ザ・ダーク (1992)

80年代の黄金時代を体験しなかった僕のような後追い世代のファンは、IRON MAIDENに対し、「なんかメタルの代表らしいから聴いてみるか」というような感じで過去のカタログに触れ、最初は「なんか古臭いなあ」などと思いつつも、次第にその楽曲の魅力に気付き、徐々にハマっていくというケースが多いのだが、僕の場合は一発で「IRON MAIDENスゲー!」とハマることができた。それは、僕とIRON MAIDENの出会いがこのアルバムだったからである。何しろ#1「Be Quick Or Be Dead」はバンド史上最もアグレッシヴと言ってもいいほどに獰猛なスピード・チューンで、そのカッコよさはリアルタイムのヘヴィ・メタル・バンド群と比較してなんら劣るものではなかったからだ。続く#2「From Here To Eternity」もキャッチーな佳曲。#3「Afraid To Shoot Stranger」は、彼らの楽曲に多い、中間部に長いインスト・パートを聴かせるタイプの楽曲の中でも個人的に一番好きな曲で、ドラマティックなツイン・リードの調べには、いつ聴いても悶えちゃう。クサいサビ・メロがナイスな#10「Judas Be My Guide」なんて隠れた名曲だね。そしてアルバムを締めるタイトル曲は、数多い彼らの大作系の曲の中でも「ライヴ映え」という点においては、かの「Hollowed Be Thy Name」をも上回るかというほどの出色の仕上がり。バンド史上初のラブ・バラードである#6「Wasting Love」も悪くない。優れた楽曲が揃っており、そして、初期を思わせるかのような緊張感が蘇っている本作は、若い世代のHMファンにぜひ薦めたい一作である。

IRON MAIDEN
NO PRAYER FOR THE DYING
82
ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイング (1990)

1988年の「モンスターズ・オブ・ロック」で共演したGUNS N' ROSESのW.アクセル・ローズに、その大がかりなステージ・セットを「ディズニー・ランドみたいだ」と揶揄されたことで、シンプルでストレートな作風になったという、まことしやかな噂のあるアルバム。個人的にはシンプルでストレートなヘヴィ・メタルも嫌いではないが、すっかり大御所として円熟してしまった彼らがいかにラフなノリを気取ろうと、サウンド全体から余裕が満ち溢れてしまって、今ひとつ緊張感に欠けるというのが正直な所。ライヴ・レコーディングによる生っぽいサウンドも、ヘヴィさを削いでいる。大仰なツイン・リードが控えめなのも痛い。なんとシングルとして全英No.1を記録した、ブルース・ディッキンソンのソロのマテリアルをIRON MAIDENでプレイした#9「Bring Your Daughter…To The Slaughter」や、#2「Holy Smoke」のような妙に明るくロックする曲も個人的に趣味ではない。タイトル曲#3や#6「The Assassin」など、佳曲もあるが、過去の名曲と比べるのは厳しいね。とにかく彼らにしては小さくまとまってしまった印象で、満足度は決して高くない。それは本作が個人的に彼らに期待する方向性とは異なる作風だから、というのもあるが、やっぱり楽曲のクオリティがイマイチなのではないかという気がしてならない。

IRON MAIDEN
SEVENTH SON OF A SEAVENTH SON
88
第七の予言 (1988)

同年に出たQUEENSRYCHEの「OPERATION:MINDCRIME」に刺激され、コンセプト・アルバムという形でリリースされた通算7作目のアルバム。タイトルもその7という数字がキーになっている。前作で導入したシンセサイズド・ギターに加え、本作ではこれまで彼らが意図的に使用を避けてきたキーボードも大胆に導入し、より洗練されたサウンドに仕上がっている。ドイツのミュンヘンで録音されたこともあってか、非常にヨーロピアンなサウンドだ。#1の「Moonchild」のような速めの曲でも、幻想的なムードを醸し出している。そういう方向性自体は非常に僕好みなのだが、こうなってくるとブルース・ディッキンソンの歌い回しのアクの強さが気になってくる。このコード進行、アレンジならもっと丁寧にメロディを歌い上げてもいいのではないか、という気がしてならない。このアルバムはジェフ・テイトの歌で聴きたいな(笑)。ともあれ#4「The Evil That Men Do」はバンド史上屈指の完成度を誇る名曲だし、アルバムのラストを飾る「Only The Good Die Young」はクサメタラーにもアピールする、ツイン・リードのメロディが印象的な佳曲だ。10分に及ぶタイトル曲も力強いサビを核にドラマティックにまとまっていて飽きさせない。ただ、ヒットシングルとなった#3「Can I Play With Madness」のあまりにもポップなコーラスがアルバムの中で浮き上がっているのと、アルバム全体で8曲と、ボリューム不足なのがちょっと残念かな。

IRON MAIDEN
SOMEWHERE IN TIME
92
サムホエア・イン・タイム (1986)

ギター・シンセを大胆に導入し、賛否両論を呼んだアルバム。特に、本作の前に発表されたJUDAS PRIESTの「TURBO」が同じくギター・シンセを導入し、ポップでキャッチーな音楽性に変化して物議を醸したこともあり、必要以上に「新しさ」というワードがクローズアップされてしまった感がある。しかし、彼らの場合新しいテクノロジーを導入しようと、基本的な音楽性は全く変わっておらず、ドラマティックな正統派HMをプレイしている。#1「Caught Somewhere In Time」はまさにギター・シンセが生きる、ジャケットのムード通りの近未来的な雰囲気が漂う1曲で、これがまたたまらなくカッコいい。力強いヴァースと、広がりのあるキャッチーなサビのコントラストが絶妙な#2「Wasted Years」は、本作から最もライヴでプレイされることが多く、カヴァーされることも多い曲だ。中間部の合唱パートがライヴに最適な#4「Heaven Can Wait」や、絶品のツイン・リードの絡みが聴ける、シリトーの名作文学をテーマにした#5「The Loneliness Of The Long Distance Runner」も強力。#6「Stranger In A Strange Land」のグルーヴもクセになる。#7「De ja vu」などもクサいギターのフレーズが印象的な佳曲だし、アルバムのラストを飾る#8「Alexander The Great」も、タイトルに相応しい雄大かつ勇壮なドラマティック・チューン。個人的にはIRON MAIDENのアルバムで一番好きな作品です。

IRON MAIDEN
POWERSLAVE
86
パワースレイブ〜死界の王、オシリスの謎〜 (1984)

ブルース・ディッキンソン(Vo)加入後第1作「THE NUMBER OF THE BEAST」が全英1位に輝き、そして前作「PIECE OF MIND」では全米チャートでも14位を記録、「NWOBHMの王者」にとどまらない「ヘヴィ・メタルの代表バンド」としての風格が備わった円熟期の1枚。彼らの楽曲中トップクラスの人気を誇る(少なくとも日本では)スピード・チューンの「Aces High」で幕を開け、続くエイドリアン・スミスのキャッチーなロック・センスが生きた#2「2minute To Midnight」もライヴの定番曲として人気の高い曲。本作を語る際、この冒頭2曲だけ突出したアルバムと評されることも多く、個人的にもその評価を必ずしも否定しないが、それは他の曲が捨て曲であることを意味するものではない。他の曲も、彼らの曲としてはやや中庸だが、ちゃんと聴き所を備えた楽曲ばかりだし、オリエンタルな旋律を取り入れたタイトル曲#7や、大作系の曲が多い彼らの楽曲の中でも最長の部類に入る壮大なエピック、#8「Rime Of The Ancient Mariner」などは、かなり気合の入った曲だろう。まあでも、やっぱり「Aces High」のインパクトに尽きるかな(笑)。


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