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LORD
DIGITAL LIES
83
デジタル・ライズ (2013)

前作「SET IN STONE」から約3年ぶりとなる4作目のアルバム。オーストラリアにおける彼らの(というよりはHR/HMの)状況が良くないため、ロード・ティム(Vo, G)が所有するSLSスタジオの仕事をメインにせざるを得なかったことが、バンド活動に集中することを妨げたようだ。しかし、そのSLSスタジオで約6ヶ月に及ぶ制作期間を経て生み出された本作は、そのスタジオ・ワークの経験が活きているのではないかと思わせる良質なメタル・アルバムに作り込まれている。元々彼らは正統的なパワー・メタルに軸足を置きつつ、時にスラッシュ・メタルを思わせるアグレッションや、80年代メロディック・メタルを思わせるキャッチーさを垣間見せてきたバンドで、本作でもその路線は変わっていないが、今回はよりKeyのフィーチュア量とコーラスの厚みが増し、メロディックでドラマティックな印象が強まっている。#5のような哀愁を帯びたメロディアスな楽曲や、#8や#10のような8分を超えるドラマティックな楽曲における劇的なコーラスは非常に強力なフックとして耳に残る。一方、アグレッシヴな楽曲の切れ味については、優れた仕上がりだった前作の楽曲にやや見劣りし、そういう意味ではやや楽曲のクオリティにバラつきを感じるのが残念。メロディ派にとってはDUNGEON時代から考えても過去最高の満足度が得られるかもしれないが、パワー・メタル・フリークにとってはややヌルくなったように感じられるかも。ボーナス・トラックは、実質ロード・ティムのソロ・アルバムだったデビュー作に収録されていた楽曲のリメイク。

LORD
SET IN STONE
84
セット・イン・ストーン (2009)

DUNGEON以来のメンバーだったティム・ヤトラス(Dr)が腰痛の問題で脱退、ダミアン・コスタスがオーディションを経て新たに加入。内容的には前作を順当に受け継いでおり、ファンであれば期待通り、DUNGEON以来のファンから見ればマンネリと言われかねない内容。とはいえ、アグレッシヴな曲からキャッチーな曲、8分に及ぶ大作からバラードまで、楽曲のバラエティ、クオリティ共にさらに磨きがかかっており、これまで以上にソリッドに研ぎ澄まされたアグレッションの切れ味がマンネリズムを吹き飛ばす。なお、本作には多数のゲストが参加しており、多くは元DUNGEONのメンバーを含む同郷オーストラリアの人物だが、ポップ・シンガーのタニア・モーランや俳優(兼HRバンドのギタリスト)のマーク・ファーズなど、彼らの人脈の広がりを感じさせるのが興味深い。また、テクニカルなインストの#10ではクレイグ・ゴールディ(G:DIO他)や、グレン・ドローヴァー(G:元KING DIAMOND, MEGADETH)、フェリッペ・アンドレオーリ(B:ANGRA)などがかつてフェスや前座として共演した縁から参加し、日本からもARGUMENT SOULのG、丸山善康がプレイしている。その他#11にHAREM SCAREMのGだったピート・レスペランスが参加しており、日本盤ボーナスはそのHAREM SCAREMの初期の名曲「Hard To Love」。メタリックながらキャッチーな曲も得意とする彼ららしく、意外とハマっている。

LORD
ASCENDENCE
82
アセンダンス (2007)

元DUNGEONの中心人物であったロード・ティム(Vo, G)のソロ・プロジェクト、LORD名義のセカンド・アルバム。とはいえ前作「A PERSONAL JOURNEY」はDUNGEON活動中に作られた副業的な「ソロ・プロジェクト」だったのに対し、本作からはDUNGEONを継承する「メイン・バンド」としてのリリースであり、バンド「LORD」としてはある意味これがデビュー作という位置づけのようだ。音楽性は時にスラッシーですらある硬質なギター・リフを主軸に、随所にメロディアスなリード・ギターや、コーラスを導入し、ソロではテクニカルな速弾き中心のプレイを聴かせるDUNGEONの王道スタイルを完全に継承しており、DUNGEON解散の報に落胆していた人たちを喜ばせるだろう。限りなくスラッシュに近いアグレッシヴな曲から、キャッチーな叙情メロディが冴える曲、そして80年代テイスト漂うヘア・メタル風味の曲まで、曲調の幅が広いのもこのバンドならではで、これを散漫ととらえるか、バラエティに富んでいる、と考えるかで評価が分かれるかも。全体に押しの強い演奏が、異なるタイプの楽曲の印象も引き締め、むしろこれで方向性が絞れていたら一本調子になりそうな気がするので個人的にはこれでいいと思う。#9のようにデス声まで導入した激しい曲も刺激的だが、個人的にはやはり時折聴かれるキャッチーな叙情メロディに心惹かれる。日本盤ボーナスはXの「Silent Jealousy」のカヴァーで、ほぼ完コピだが、オリジナルより重量感のある演奏と、日本のプログレ・メタル・バンドVIGILANTEの丹羽英彰の歌声に違和感を覚えてしまうのがファンの偽らざる感想。


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