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LORDI
BABES FOR BREAKFAST
83
ベイブス・フォー・ブレックファスト (2010)

HR/HM界の大御所プロデューサー、マイケル・ワグナーのプロデュースによる、アメリカ・ナッシュヴィル録音の5作目のアルバム。大成功の代償としての過密なスケジュールによって消耗しきっていた前作は、彼らの精神状態を反映してダークなものになっていたが、本作では前作にあった不似合いなヘヴィさが後退し、キャッチーさを回復している。悪趣味極まる本作のアートワークの情況を表現するかのようなSEの#1に続くタイトル曲#2はマイケル・ワグナー効果か、意外なほど正統的なスピード・メタル・チューンに仕上がっている。続く#3のタイトルは「This Is Heavy Metal」と、妙に「ヘヴィ・メタル」に対するこだわりが感じられるのが本作の特徴のひとつ。一方でKISSのブルース・キューリックが作曲に関わり、ギター・ソロも弾いているバラードの#6ではオーケストラを導入してみたり、間奏パートが劇的な#10にはゴスペル聖歌隊が参加したりとこれまで以上にバラエティに富んだソングライティングを披露している。#4や#7、#13、#14(そして日本盤ボーナスの#16)のような80年代的なKeyアレンジが施されたポップな楽曲はやっぱり魅力的。デビュー作を頂点に以降一貫して低下を続けていた楽曲のクオリティがここに来てようやく下げ止まったかな。

LORDI
DEADACHE
81
デッドエイク (2008)

ユーロビジョン優勝曲を含む話題作だった前作は本国ではトリプル・プラチナ、ドイツとスウェーデンではゴールドを獲得し、トータルで35万枚ほど売れたらしい。この数字を多いと見るか少ないと見るかは微妙なところだが同じフィンランドのHIMやNIGHTWISHが全世界で100万枚クラスのセールスを記録していることを考えるとやはりまだまだ本国中心に盛り上がっている感は否めない。特に日本では(日本盤リリースのタイミングの問題もあったが)あまりこのバンドに注目が集まっているとは思えず、その音楽の大衆性に見合った注目が得られていないように思えるのが残念な所。本作も前作までの流れを受け継いだポップ&キャッチーなサウンドを展開しているが、正直全体的にはやや落ち着き気味のような気がする。後半尻上がりに楽曲のクオリティが上がっていくので聴き終えた後の印象は決して悪くないが、ファーストやセカンドの頃にあったような心躍るキラー・チューンが見当たらないため、今ひとつインパクトが弱い。被り物がこれまで以上に凶悪なものになっているだけに、本作からこのバンドの音楽を耳にしたような初心者には「こけおどし」な印象を持たれてしまうのでは。とりあえずこのバンドの音楽にダウン・チューニングのギター・サウンドは似つかわしくない気がする。

LORDI
THE AROCKALYPSE
83
ハード・ロック黙示録 (2006)

メンバー・チェンジを経て発表されたサード・アルバム。クレジットを見るとBとKeyが交替しているが、何しろこのメイクなので、人が替わったのかメイクが変わっただけなのか、判別するのは困難だったりして(笑)。アナウンサーに扮したゲストのディー・スナイダー(TWISTED SISTER)による「モンスターの侵略」ニュースに続いて繰り出されるサウンドは、これまでよりもサウンドの厚みを増し、いつになくパワー・メタリックな緊張感を放っている。楽曲は相変わらず高品質だが、ギター・リフがヘヴィになり、コーラスも分厚くなった結果、LORDI(Vo)の歌う下世話なまでにキャッチーな主旋律がやや埋もれ気味なのが残念。しかし、本作収録の#7「Hard Rock Hallelujah」が、ABBAやセリーヌ・ディオンなどを世に送り出したヨーロッパ最大級の音楽イベント「ユーロビジョン・ソングコンテスト」で史上最高点を獲得して優勝。同曲は国歌に匹敵するとさえ言われる、フィンランド一有名な楽曲になるという前代未聞の事態を引き起こした結果、そのクオリティにもかかわらず実現していなかった日本盤リリースがようやく実現することとなった。ちなみに本作にはウド・ダークシュナイダー(元ACCEPT, 現U.D.O.)やブルース・キューリック(元KISS)などがゲスト参加。

LORDI
THE MONSTERICAN DREAM
86
ザ・モンスタリカン・ドリーム (2004)

フィンランドのモンスター・バンド(いろんな意味で)、LORDIのセカンド・アルバム。前作があまりにも良かっただけに、期待半分・不安半分だったが、今回も極上のポップ・メタル・チューンを揃えてきた。どの曲もキャッチーで優れた出来だが、中でも#3「Blood Red Sandman」、そして#4「My Heaven Is Your Hell」の流れはあまりに強力で、思わず身体が動き出してしまう。こんな素晴らしい曲を書けるなんて、VoのLORDIにはデズモンド・チャイルドの生霊が憑依しているとしか思えないね。彼の歌声はお世辞にも美声とは言えず、むしろ悪声とさえ言えなくもないが、どこかセクシーで、どこか切ないこの声だからこそ、このどキャッチーなメロディがクサくならずにカッコよく響く。ただ、今作ではやや自らのイメージであるオカルトというかホラーっぽい「ムード」に流れてしまった感もあり、アルバムトータルでのキャッチー度は前作に一歩譲るかな。しかし、SONATA ARCTICAにNIGHTWISH、HIMにこのLORDIと、フィンランドのメタル・シーンの層は本当に厚いね。フィンランドの人口は日本の20分の1くらいだと思うけど、メタル・バンドの粒の揃い方はマジで20倍なんじゃないかって気がするよ。まあ、このバンドはあまりフィンランドっぽくないけど。とはいえ本作がレコーディングされたのはフィンランドのメタル聖地、FINVOXスタジオなんですねー。

LORDI
GET HEAVY
88
ゲット・ヘヴィ (2002)

メンバー全員がモンスター・メイクを施したフィンランド出身バンドのデビュー・アルバム。ルックスだけ見るとGWARの如きイロモノにしか思えないが、音楽面でもルックスに負けないくらいの強いインパクトがある。そのグロテスクなメイクから想像されるデス・メタルめいたイメージとは全く異なる、超キャッチーな80年代MTVメタル風のサウンドは、21世紀の今となってはむしろ新鮮で、楽曲のクオリティはあり得ないほどに高い。リーダー・トラックとなる#5「Would You Love A Monsterman?」はキャッチーな中にも哀愁の滲むコーラスが耳に残る名曲だし、#3「Devil Is A Loser」も、VoであるMr.Lordi(彼はKISSファンクラブのフィンランド支局長でもあるらしい)の魅力的なダミ声を活かしたサビが印象的な名曲。メランコリックな#6「Icon Of Dominate」や、ダンサブルな#11「Dynamite Tonight」など、その他の曲も秀曲、佳曲揃いで捨て曲なし。とにかくアイドル・ポップ・グループ顔負けにサビのメロディがキャッチーで、麻薬的な魅力を放っている。楽曲も大半が3分台とコンパクトなのも聴きやすくて良い。久々に「ポップ・ミュージックの魔法」を感じた一枚。

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