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NOCTURNAL RITES
THE 8TH SIN
90
第8の罪 (2007)

新たなる王道、とでも表現するべきか。NOCTURNAL RITESの、タイトル通り8作目となる本作は、2000年代における正統派ヘヴィ・メタルとはどんな音か、という問いに明確な答えを出した快作となった。#1「Call Out To The World」のリズミックなリフは所謂狭義の「正統派HM」の流れにはない、90年代以降のヘヴィ・ロック・サウンドの影響を感じさせるものだし、リーダー・トラックとなった#2「Never Again」のイントロのデジタルなアレンジもまた然り。しかし、どの曲もジョニー・リンドクヴィストの情熱的な歌声を生かした熱い叙情メロディに彩られ、ニルス・ノーベリによるギター・ソロもコンパクトながら充分に聴き応えあるもので、この音楽が「ヘヴィ・メタルのアイデンティティ」を完璧に備えた音楽であることを万人に納得させるだろう。伝統と革新、そしてヘヴィなリフに代表される「剛」と、絶妙なKeyやコーラスのアレンジに代表される「柔」のバランスの絶妙さも素晴らしいが、そんな評論家気取りのごたくがどうでも良くなるほど楽曲が良い。FAIR WARNINGがパワー・メタル化したかのような哀愁に満ちたメロディの波状攻撃に、正直久々に胸が熱くなった。バラード#9「Me」なども、メタル・バンドにありがちな「アルバムに起伏をつけるためだけの存在」にとどまらない、泣かせる曲だ。このバンドがこのアルバムでもブレイクできないとしたら、やはりメンバーに華がないことや、バンド名が覚えにくいといった、音楽とは無関係な理由しか考えられないね。

NOCTURNAL RITES
GRAND ILLUSION
86
グランド・イリュージョン (2005)

ジョニー・リンドクヴィスト加入後、メロディック・スピード・メタルから正統派メタルへとシフトチェンジした彼らであるが、遂に本作ではいわゆる疾走チューンと呼べるような疾走チューンは姿を消している。しかし、基本的に疾走曲好きの私でさえそのことが聴き終えた後まったく気にならなかったほど、細かいことをガタガタ言わせない完成度の高いアルバムである。作品のクオリティの高さとは裏腹に日本での人気は伸び悩んでいるが、欧州での人気・評価は着実に向上しており、そのことを証明するかのようにイェンス・ヨハンソン(key:STRATOVARIUS)、ステファン・エルムグレン(G:HAMMERFALL)ほか、STEEL ATTACKやSTORYTELLER、PERSUADER、EVERGRAYのメンバーなど、本作にはかつてないほど多くのゲスト・ミュージシャンが迎えられている。#6「Cuts Like A Knife」におけるKAMELOTの「March Of Mephisto」を彷彿させる邪悪なムードの演出に、やはりゲストとして迎えられたブラック・メタル・バンドNAGLFARのクリストファー・オリヴィクス(Vo)のデス声が効果的に使用され、新たな一面の開拓に寄与している。#3「Still Alive」は今年のベスト・チューン有力候補といえる名曲だね。同時期にリリースされたPRIMAL FEARの新譜とともに、メタルを聴かない人たちに「これがヘヴィ・メタルだよ」と胸を張って言える作品だ。

NOCTURNAL RITES
NEW WORLD MESSIAH
87
ニュー・ワールド・メシア (2004)

前作がBURRN! 誌で大絶賛され、実際クオリティの高いサウンドを聴かせたものの、何故かブレイクに至らなかったNOCTURNAL RITESの6枚目のアルバム。タイトルといい、アートワークといい、前作以上にメロディック・パワー・メタルのファンをくすぐるものであるが、内容的には前作・前々作からの延長線上にある、ジョニー・リンドクヴィスト加入後の正統派メタル然としたノクタ節。たしかに名盤「SACRED TALISMAN」で聴かれたような、麻薬的なまでに扇情的なメロディはここにはなく、このままでは正統派メタルファンにはメロスピバンド的なイメージが敬遠され、メロスピファンには正統派メタル的なサウンドが琴線に響かない、というジャンルのエア・ポケットに落ち込むような状態となってしまいそうで心配です。ホント、スケール感を感じさせる良いバンドだと思うんだけど…。1曲目のタイトル曲のようなスケール感に満ちた曲を書けるバンドが今いくつある? メランコリックなギターのリフレインが印象的な#2や、これぞ!の疾走チューン#3など、今回も捨て曲なしですよ。もうちょっとサウンドに奥行きとタイトさがあれば完璧でしたね。蛇足ですが日本盤ボーナスである、ややハード・ロック的なテイストを持った「Another Storm」もなかなかの佳曲なので、購入するなら国内盤がオススメです。

NOCTURNAL RITES
SHADOWLAND
86
シャドウランド (2002)

日本のメロスピ・マニアの不評がメンバーの耳に届いてしまったんでしょうか、ジャケットがヒロイック・ファンタジー路線に回帰し、前作で必要以上に耳を引いてしまったマシーナリーなサウンドもやや伝統路線に回帰しています。とはいえ、以前のメロディック・スピード・メタル路線に復帰した訳ではなく、いわゆる前作を踏襲した正統派メタル路線を崩してはいません。思うに、あの歌メロは前任のヴォーカリストから出てきたものだった、と考えるのが妥当ではないかと。本作はBURRN! 誌で大絶賛されましたが、それはおそらくバンドの持つポテンシャルを評価してのものだと思われます。サウンド、プレイ、歌唱、全て高い水準で安定しているし、楽曲もおしなべてよく出来ているのだが、「この1曲!」という決定打に欠けている感も。疾走するサビが魅力的な「Revelation」や、ジョニーの熱い歌声が最高に映える疾走曲の「Vengeance」など、相当いい線行っているのだが…。惜しい! ま、それは次作の課題ということで。ちなみに日本盤ボーナス・トラックの「The Iron Force」の2002年バージョンですが、このミドルの力強い曲にはジョニーの歌声がよく合っている…のだが、隠し味だったキーボードのバッキングが無くなっているのが個人的にはマイナスなので、差し引きゼロです(笑)。

NOCTURNAL RITES
AFTERLIFE
83
アフターライフ (2000)

ヴォーカルをアンダース・ザックリソンからジョニー・リンドクヴィストに替えての第一弾アルバム。新ヴォーカリストのジョニーは、トミー・ハート(ex. FAIR WARNING)とロブ・ロック(ex. IMPELLITTERI)を7:3の割合でミックスしたような熱い歌声を聴かせる逸材で、その歌唱力は明らかに前任者以上。オープニングを飾る疾走チューン「Afterlife」を聴いたときは「これで彼らもAクラス入りだ!」と思ったものです。しかし、聴き進むとなんだか様子がおかしい。前作のヒロイック・ファンタジー調のジャケットからSF調のそれに変わったことが象徴するように、サウンドのタッチも変わっている。ウエットで叙情的なプレイを得意としていたはずのニルス・ノーベリのギター・サウンドが妙にマシーナリーで硬質なものに変わり、好き者のツボを突きまくっていた「あの」リード・プレイが殆どない。しかも所々に入るデジタルなSE。曲調が典型的なメロディック・スピード・メタルを離れ、正統派メタルに近づいたのはいいのだが、前作までの「あの」メロディがあまりにも強烈だったので物足りなさを感じてしまったのも事実。サイバー・テイストの正統派メタルってのも個性的で、これはこれでアリって気もするけど、やっぱニルス・ノーベリには泣きのギターを弾いてもらいたいな。音楽のクオリティは高いです。

NOCTURNAL RITES
THE SACRED TALISMAN
90
セイクリッド・タリスマン (1999)

化けた、というのが一般的な印象かもしれない。欧州メタル・インディー大手、「Century Media」との契約を得て制作された本作は、確かに前作までのB級臭さを完全に払拭した、素晴らしい出来栄えのアルバムに仕上がっている。しかし、実際のところ、楽曲のクオリティにおいては前作も、本作に劣らない充実したものを呈示していた事実があり、化けた、という印象は主に音質の向上によるものだろう。彼らがようやく楽曲の良さを十全に引き出せるだけの制作環境を得たことにまずは乾杯。前作の「Change The World」でも感じた陽性のサビがやや引っかかるものの、イントロからヴァース、ブリッジまで完璧なメロディ展開を見せる名曲「Destiny Calls」で幕を開ける本作は、マニアが泣いて喜ぶスピード・チューンを軸に、「The Iron Force」をはじめとする正統派メタル的な曲や、名バラードと呼ぶに値する「The Legend Lives On」まで、本当にいい曲が揃っている。特に、ヘヴィ・メタルならではのエキサイトメントに満ちた「Eternity Holds」から、最高にカッコいい疾走チューン「When Fire Comes To Ice」の流れは何度聴いても失禁モノ。剣と魔法の世界、いわゆるヒロイック・ファンタジーに徹した歌詞も、きっとマニアにはたまらないことでしょう。ある意味、メロディック・スピード・メタルというジャンルを象徴すると言っても過言ではない名盤。

NOCTURNAL RITES
TALES OF MYSTERY AND IMAGINATION
81
エンド・オヴ・ザ・ワールド (1997)

BURRN! 誌でのレビューにおける好評もあり、発表当時マニアの間でちょっとした話題になったアルバム。僕も期待に胸を膨らませて聴いた。1曲目のイントロから炸裂する哀愁のリード・ギター。おぉ〜キた! と思ったのも束の間、しばらく聴き進むと…ん〜、どうなんでしょう、これは(長嶋茂雄風)。前作も音質はよくなかったけど、それがまた独特のアンダーグラウンドなムードを生んでいて、趣があった。然るに、本作の音質の悪さは奥行きがなくて単に安っぽいだけ。楽曲は前作に比べて整理されて完成度を高め、歌メロの哀愁もよりキャッチーになり、印象深くなった。特に、前作ではリードのメロディに頼りっきりだったギターが、リフの面で格段にカッコいいものを呈示するようになり、より正統的な意味でのメタルとしての完成度を高めたことは手放しで絶賛できるし、ニルス・ノーベリのカイ・ハンセンmeetsマイケル・シェンカーといった趣のギター・プレイは最高なのだが…それだけに、この音質は惜しまれるんだよね〜。ただ、発表当時名曲としてマニアの間で話題になった「Change The World」は、まるでHELLOWEENやGAMMA RAYのような(それがウケた原因なのかもしれないが)明るいスピード・チューンで、個人的にはこのバンドがこんな曲をやらなくても…という感想。哀愁こそがこのバンドの肝でしょ、やっぱ。

NOCTURNAL RITES
IN A TIME OF BLOOD AND FIRE
78
イン・ア・タイム・オブ・ブラッド・アンド・ファイア (1996)

このアルバムに出会ったのは、当時丸井の地下にあったヴァージン・メガストア池袋店に、随分と濃ゆい店員さんがいたと見えて、本作の輸入盤が試聴機に入ってプッシュされていたのがきっかけでした。そのとき試聴したときと基本的には印象は変わっていない。かなりイモ臭いけど、心惹かれる哀愁のメロディに満ちたメロディック・スピード・メタル。音質はイマイチだし、ヴォーカルも微妙なのだが(歌えていないわけではない)、とにかくリード・ギターの奏でる旋律がたまらなくツボだった。後に当時まだメジャー流通に乗っていなかったサウンドホリックからリリースされた日本盤の解説を読んで、彼らが元々デス・メタル・バンドだったと知り、驚くよりも、むしろ納得。というのも、彼らの音楽の持つムードと、リード・ギターの使い方は、まさしくIN FLAMESに代表される「イエテボリ・サウンド」のそれだったから。このレビューを書くために久々に聴き直してみたけど、やっぱいいねぇ、このギター・メロディ。後の驚異的な化けっぷりは想像できないけど、ある意味この頃の方がメロディの哀愁は強かったかも。

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