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陰陽座
雷神創世
87
RaiJinSouSei (2014)

「風神界逅」と2作同時発売となった通算12作目のフル・アルバム。こちらは「鬼子母神」から取り入れられた、ダウン・チューニングの楽曲によって構成された「ヘヴィ・サイド」のアルバム。ちなみにドラム・サウンドのエンジニアも「風神界逅」と異なるらしい。ヘヴィ・サイドとはいえ、こちらも充分にメロディックであり、あえて言うならシリアスな緊張感を強めた作風と言うべきか。ちゃんとした歌モノながら、序曲的な風格を感じさせる#1「雷神」からカッコよく、メタル魂を鼓舞される瞬間が多かったのはこちらのアルバムである。デス声がややショボいが、バンド史上最高級にヘヴィな#4、和風でありながらブルージーな雰囲気も漂う#7、13分に及ぶ、彼らお得意のドラマティックかつディープな長編音楽絵巻#9など、「通受け」する楽曲が多い一方、シングルとなった#8や、陰りのあるメロディアスな#6、儚くも麗しきバラードの#10など、キャッチーな楽曲もちゃんと押さえている。「風神界逅」収録の「雲は龍に舞い、風は鳳に歌う」を受ける#11「而して動くこと雷霆の如し」は、例え連作という「仕掛け」がなくとも名曲だ。2枚同時リリースということで「密度が薄いのでは?」などという懸念は全く杞憂の、圧倒的なクオリティの安定感に感服せざるを得ない。

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風神界逅
87
Fu-JinKaiKou (2014)

「雷神創世」と2作同時発売となった通算11作目(同時発売だが、こちらが11作目という扱いのようだ)のフル・アルバム。前年に発売されたベスト・アルバム「龍鳳珠玉」に収められていた「吹けよ風、轟けよ嵐」という新曲がこの2枚同時発売企画の伏線だったということか。風神・雷神というのは「対になるもの」の象徴であり、本作はレギュラー・チューニングの楽曲でまとめられた、いわば「メロディック・サイド」のアルバムと言えるだろう。とはいえ、シンフォニックかつドラマティックな序曲#1からスピード・チューン#2、そしてヘヴィで押しの強い#3の流れに象徴されるように、充分なアグレッションも備えた、彼ららしいヘヴィ・メタル・アルバムであることは間違いない。猛然と疾駆する#6から、80年代風の#7、シンフォニックで雄大な#10など、バラエティに富んだ楽曲を収めつつ、全体的に黒猫(Vo)が歌う哀愁を帯びたパートがメインになっており、哀愁メロディ派としてはなかなか満足度の高い作風である。ただ、前作「鬼子母神」はコンセプト・アルバム、今回は2作同時発売と、音楽的に完成され、バンド・コンセプトやイメージも変えようがないため、マンネリ感を回避するために音楽そのものとは無関係なポイントで「新味」を打ち出そうとしているようにも映るのが少々気にならないでもない(ましてどちらの手法もロック史上においては前例があり、斬新とまでは言えないだけに…)。

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鬼子母神
86
KiShiBoJin (2011)

かねてから予告されていた通り、通算10作目のフル・アルバムとなる本作はオリジナル・ストーリーに基いたトータル・コンセプト・アルバムとなった。アルバムと同時に、そのストーリーを戯曲化した脚本『絶界の鬼子母神』が発売されたほどの力の入りようである。そういう設定のため、アルバム全体が組曲の体をなしているが、1曲を12分割している訳ではなく、各曲が独立した楽曲として機能している。とはいえ、これまでのアルバムに比べると曲調というかアルバムを通じてのムードに統一感があり、冒頭とエンディングのリンクもあり、歌詞テーマのみならずトータル性を強く感じさせる作風である。ストーリーが悲劇的であることもあってか、全体的にシリアスなムードに包まれており、彼らのアルバムの中ではヘヴィな印象も強い。その分これまでの作品に比べるとバラエティ感やキャッチーさについては一歩譲るものの、個々の楽曲の完成度についてはこれまで通り非常に高く、ストーリーを無視したヘヴィ・メタル・アルバムとして聴いても充分に楽しめるのはさすが。脚本を読み、その日本社会特有の闇を描き出すストーリーに感情移入できたファンにとっては最高傑作とすら思えるのではないだろうか。なお、本作のDrはACID BLACK CHERRYやBREAKERZなどで知られるセッション・ドラマーの土橋誠がプレイしている。

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金剛九尾
86
KonGouKyuBi (2009)

09年9月9日にリリースされた9枚目のアルバム。タイトルも9作目を意識しての命名だろう。前作が「妖怪へヴィ・メタル」の原点に回帰するかのようなストイックな作風だったのに対し、本作は楽曲のバラエティ、キャッチーさが増しており、1曲目の「獏」がV系を思わせる幻想的かつソフトな楽曲であることもあって、必ずしもメタラーではないタイプのリスナーが取っつきやすい印象の一枚。個人的にはその「獏」が今一つピンと来ないため、一聴時の印象はあまり芳しくなかったが、聴き込むと今回は久々にメロディーがキャッチーに練られている印象で、そういう意味では、アルバムとしての印象は「臥龍點睛」に近く、悪くない。両A面シングルの曲順そのままに収められた#7、#8が本作のメロディアスな印象を決定づけているという意味でハイライトと言えよう。#5は明らかにゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」にインスパイアされたと思しきブルージーな楽曲で、本作における新境地。組曲形式の#9〜#11「九尾」は、#9、#10とメイデン風に進行し、最後にSLAYERの「Reigning Blood」のようなリフを持つブルータルな#11で締める、という構成が結構新鮮。「語り」がないのがファンには寂しい? 恒例のおまけソング(?)#12は「喰らいあう」というタイトルが英語の「Cry Out」に聴こえることを狙ったSHOW-YA風ハード・R&Rチューンで、歌詞も含めて楽しい一曲。なお、Drの斗羅が諸般の事情により脱退、本名の「河塚篤史」名義でサポート・ドラマーとして参加している。

陰陽座
魑魅魍魎
86
ChiMiMouRyou (2008)

ついにオリコンTOP10入り(9位)を果たした8枚目のフル・アルバム。前作が彼らとしては異例なほどスラッシュ/パワー・メタル風味の強いアグレッシヴなアルバムだったが、本作は「魑魅魍魎」というタイトル通り「妖怪ヘヴィ・メタル」という名前に相応しい、彼らのイメージ通りの作風となっている。イントロが初期の、そしてその後の展開が後期のBLACK SABBATHを思わせる1曲目は、決してツカミが良いとは言えず、個人的にはこういった曲をオープニングに持ってくることは商業的にはあまり賢明なことだとは思えないが、それは彼らの自信の表れだろう。これまでの彼ら同様、速い曲から泥臭い曲、キャッチーな曲まで、HR/HMというフレームの中でバラエティに富んだ世界を描きだしており、これといったキメ曲はないものの、個々の楽曲のクオリティも申し分ない。何より前作で物足りなかったドラマティックさが大幅に復活しているのが嬉しい。アルバムジャケットのモチーフとなっている、本作におけるハイライトの#10は、10分を超える大作で、これまでのアルバムで披露されてきた大作曲同様、日本語であることでいっそうその情景が脳裏に浮かぶ、彼らならでは音絵巻。この大作の後に感動的なバラード#11、そして「救い」となるアニソン風の#12を持ってくるアルバム構成の妙も毎度のことながら見事。これは「2つ先(のアルバム)までタイトルも決まっている」という瞬火の明確なビジョンがなせる業だろう。「大化け」も期待できない代わりに、安定感は抜群だ。

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魔王戴天
84
MaOuTaiTen (2007)

2枚組ベスト・アルバム「陰陽珠玉」、ライヴ・アルバム「陰陽雷舞」を挟んでリリースされた7作目のスタジオ・フル・アルバム。いつになく禍々しいジャケットのアートワークが象徴するように、アグレッシヴなサウンドが聴けるアルバムとなっている。従来と比して明らかにギターの音が太くなっており、そのことをどう受け止めるかでこのアルバムの印象は変わってくるのではないだろうか。個人的には、彼らの持っていたウエットな叙情性や妖艶さが損なわれてしまったように感じられ、諸手を上げて喜ぶことは憚られるアルバムだ。#8などはまるでSLAYERばりのスラッシュ・メタルで、恐らくあまり洋楽のメタルを聴かないようなタイプの陰陽座ファンが「陰陽座ってスゲー!」と大喜びするような曲だが、正直こうしたヘヴィなアグレッションというのは彼らの魅力の本質ではなく、むしろ彼らの場合あまりヘヴィではないからこそ音楽に風情が生まれていたと思っている。#2から#5までの畳み掛けはカッコいいし、相変わらずソングライティングの平均点は高いが、全体的にドラマティックな要素が減少しているのが物足りなく、シングル曲#3のキャッチーさがこれまでのシングルと比べて見劣りすること、メロウな哀愁チューンがないこと、バラード#9も、これまでのバラードに比べて「並」な印象であることなど、楽曲面での不満はこれまでで一番大きいかも…。

陰陽座
臥龍點睛
87
GaRyouTenSei (2005)

三部構成の組曲「義経」(偶然か戦略か、大河ドラマと同じモチーフ)を3ヶ月連続シングルリリース、そしてTVアニメ「バジリスク」(全国ネットどころかテレビ東京単ですらない、テレビ神奈川、テレビ埼玉といった近郊U局でのオンエアだが…)への#4「甲賀忍法帖」の主題歌提供など、だいぶメディア露出を意識したマーケティング展開が目に付くようになってきた彼らの、通算6作目となるフル・アルバム。とりあえず1曲目「靂」が僕の苦手なアメリカン・メタル調で「ゲッ」と思いましたが、2曲目以降はいつもどおりの哀愁を感じさせるメロディックな陰陽座サウンドでひと安心。中でも、黒猫(Vo)作曲の#8「蛟龍の巫女」がビックリするほど完成度の高いメロディック・スピード・メタルで感激。結局アルバムにフル収録された組曲「義経」は恐らく彼らのキャリアにおけるひとつのピークと言える完成度。全体的には、楽曲のバラエティを増し、「ロック・バンド」としての幅を広げた一枚と言える。蛇足ながらちょっと気になったのが、前々作・前作に続き、次第に瞬火(B)のVoのフィーチュア度が増していること。瞬火も決して下手ではないし、以前よりクセも薄れてきてはいるが、個人的には彼の歌唱法はヴィジュアル系のそれっぽくて、HR/HMファンの反発を受けそうな雰囲気を感じるんですよね。#5「不知火」なんてLUNA SEAかと思いましたよ。好きだけど。

陰陽座
夢幻泡影
85
MuGenHouYou (2004)

このジャケットは…BLACK SABBATHの「CROSS PURPOSES」? しかしCGで自分の奥さん(黒猫)に羽付けるの好きですね>実は前職グラフィック・デザイナー瞬火。まぁそんなことは置いておいて、本作はジャケットのイメージ通りのダークでシリアスな曲調の多い、従来以上にメタリックな楽曲が揃っており、普通メジャー3作目にもなれば出てくることが多い「ヒット・チャートへの色気」はまったく感じられない。#5「舞頚」にはなんとデス・ヴォイス(ちょっと細めだが)まで導入し、さながらIN FLAMESを思わせるアグレッションを導入している。#7「煙々羅」のサイケ風味は新境地で、アルバム中のアクセントになっている。アコースティック・バラードの#9「夢虫」もフックが効いていて、単なる甘口ソングに終わらない仕上がり。相変わらずキャッチーでメロディアスな優れたHR/HMチューンの揃った秀作であるが、今回は「これぞ!」というキメ曲に欠けるかな。とはいえ、1年に1枚というハイ・ペースでアルバムをリリースしているにもかかわらず、ここまで捨て曲なしのクオリティを保ち続けているのは尋常ではない。


陰陽座
鳳翼麟瞳
87
HouYokuRinDou (2003)

メジャー2作目となる通算4枚目のアルバム。#1〜#2の流れはどう聴いても「Hellion〜Electric Eye」以外の何物でもなく、JUDAS PRIESTの大ファンである中心人物、瞬火のオマージュと思われる。続く#3も男気溢れる疾走ナンバーで、正統派メタルのファンならもうこの時点でハートを鷲づかみでしょ。先行シングル#4「妖花忍法帖」も哀愁ハード・ポップの秀曲(ちょっとヴィジュアル系っぽい?)だし、ゴシック・ドゥーム・プログレな#5「鵺」の暗黒美も酔わせるねぇ。初期BLACK SABBATHを思わせるヘヴィ・シャッフル・ナンバーの#7「飛頭蛮」などで通を唸らせるあたりもさすが。そして三柴理(ex.筋肉少女帯)の狂気が滲む美しきピアノと、黒猫(Vo)の麗しきソプラノによるバラード「星の宿り」なんて儚すぎてたまらんですよ。ラスト10曲目は恒例の愛媛(彼らの地元)訛りによる「お祭りソング」だが、これは…。アニメ声優の歌みたいだ…。いや、黒猫の歌声にはハマってるし、よくできた曲なんだけど…この掛け合いの相手は誰?(苦笑)。

陰陽座
煌神羅刹
89
KouJinRaSetsu (2002)

インディーズで2枚のアルバムを発表し、話題を呼んでいた「妖怪ヘヴィ・メタル・バンド」陰陽座のメジャー・デビュー・アルバム。色物扱いを免れないルックスで、一部では変種のヴィジュアル系扱いされることもある彼らではあるが、その音楽性は「和風のIRON MAIDEN」とでも形容すべき、紛れもないヘヴィ・メタルそのもの。和音階のエキゾチックなフレーズからヘヴィなギター・リフが轟き、疾走に転じる名曲#1「羅刹」から鳥肌もののカッコよさだが、#2、#3、#5、#6と、プログレ的な要素が強かったインディーズ時代に比べストレートな楽曲を増やしたことが聴きやすさを生み、メジャー・デビューに相応しいポピュラリティを醸し出している。中でもデビュー・シングルとなった#7「月に叢雲花に風」はアニメの主題歌ばりのダイナミックなサビが印象的な名曲。#8、#9の2曲分の長さで繰り広げられる組曲「黒塚」も黒猫(Vo)によるシアトリカルなセリフによる演出が映えるドラマティックな仕上がり。和風な雰囲気と、歌唱力・表現力ともに抜群ながら、まるで「歌のおねえさん」のような印象も与える黒猫(Vo)の歌声、それに絡む瞬火のクセのあるVoは好き嫌いが分かれるかもしれないが、素晴らしい楽曲の充実ぶり・世界観の完成度である。ちょっと音が軽いのは気になるが、個人的にはもの凄く気に入りました。

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百鬼繚乱
82
HyakkiRyoRan (2000)

強力なスピード・メタル・チューン「式を駆る者」で幕を開けるセカンド・アルバム。前作から1年という決して長くないインターバルでリリースされたが、音質・演奏技術の面で確実な成長を示している(まだまだ改善の余地はあるが)。楽曲の面でも、前作に若干感じられた世界観とヘヴィ・メタル・サウンドのミスマッチがほぼ解消され(和風な要素がヘヴィ・メタル・サウンドになじんで)、全体的にキャッチーさを増して聴きやすくなっている。中でも#2「桜花の理」のキャッチーさは後のシングル曲に通じるものがあり(実際CD-Rシングルとして発売された)、本作のクオリティを象徴する1曲といえるだろう。日本の伝統的なわらべ歌などに潜む不気味さを暴き出すかのような#5「八咫烏」などは「和風ドゥーム・メタル」の傑作だし、クリーンなギター・サウンドで、ある種ヴィジュアル系的な哀愁世界を描く#6「歪む月」など、楽曲の面でバラエティとクオリティが共に向上しているのことが、次作におけるメジャー・デビューにつながったのだろう。初期の佳作。

陰陽座

鬼哭転生

80
KiKokuTenShou (1999)

99年に大阪で結成された「妖怪ヘヴィ・メタル」バンド、陰陽座のデビュー・アルバム。パッと聴きの印象は人間椅子+初期の聖飢魔U、といった感じで、ベーシックなサウンドは割と古典的なヘヴィ・メタルながら、男女のツイン・ヴォーカル、プログレッシヴなリズム・アレンジ、そしてバンド名やルックス、歌詞世界が示すとおりの和風な旋律によって他のバンド群とは明確に一線を画した個性がこの時点でほぼ完成している。とはいえ、この時点ではメジャー・デビュー後に展開された音楽に比べると荒削りで、アレンジ等の面でまだまだ洗練されていない部分も耳につく。インディーズだけに音質が良くないのはある程度やむをえないとしても、演奏力、ハッキリ言ってしまうとGのテクニックに関しては正直プロフェッショナルとは言い難く、#7「鬼斬忍法帖」におけるソロなどは「これは本当にOKテイクなのか?」と首を傾げてしまうほど。と、苦言めいたことを書きつつも、それは後のクオリティの高さを知っていればこそ。むしろバンド結成から一年も経ずしてここまで完成度の高い世界観が具現化されていることは驚異的で、それは恐らく瞬火(B/Vo)という明確なヴィジョンと豊かな才能を持った中心人物がバンドを取り仕切っているからこそなしえた業であろう。衝撃のデビュー作である。


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