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OZZY OSBOURNE
SCREAM
79
スクリーム (2010)

紆余曲折ありつつも、アルバム5枚、20年以上に渡って断続的に続いたザック・ワイルドとのパートナーシップを解消、新たなギタリストとしてアメリカではほぼ無名のギリシャ人ギタリスト、ガス・G(FIREWIND)を迎えて制作されたアルバム。ただ、彼が加入したときには既に楽曲は完成しており、その貢献は単純に演奏のみで、正直な所あまり彼の個性は伝わってこない。なお、Drも再結成FAITH NO MOREに戻ったマイク・ボーディンから、ブラスコ(B)と同じく元ROB ZOMBIEのトミー・クルフェトスに替っており、さらにKey奏者としてかつて「OZZMOSIS」でプレイしていたリック・ウェイクマンの息子であるアダム・ウェイクマンがクレジットされている。前作に続いてプロデューサーを務めたケヴィン・チャーコとの共同作業によって制作された楽曲の方向性は、基本的に前作の流れをくむモダンなヘヴィ・ロック的なもの。冒頭を飾る「Let It Die」などは「21世紀版のBLACK SABBATH」といった感じのヘヴィな楽曲だが、リーダー・トラックである#2「Let Me Hear You Scream」がいかにもライヴで盛り上がりそうなアッパーな楽曲であることが象徴するように、ヘヴィかつややグルーミーだった前作に比べ明るくエネルギッシュな印象を与えるアルバムに仕上がっている。これはこれで悪くはないが、せめてギター・ソロだけでももう少しガス・Gらしい「泣き」を注入できなかったものか。

OZZY OSBOURNE
BLACK RAIN
77
ブラック・レイン (2007)

TV番組「THE OSBOURNES」の大ヒットによって一躍「セレブ」になってしまったオジーの、カヴァー・アルバム「UNDER COVER」を挟んでリリースされたアルバム。カヴァー作なんていかにも「セレブ・タレント」が出しそうな作品だったので、本作もセレブなポップ・アルバムになりかねないと思っていたら、1曲目から重心の低いヘヴィ・チューンで、続くリーダー・トラックである#2「I Don't Wanna Stop」もかなり骨太な仕上がり。前作では全ての楽曲をプロデューサーに没にされたザック・ワイルドが再びソングライティングに深く関わっていることが影響しているのか、さながらBLACK LABEL SOCIETYのアルバムでオジーが歌っているかのようでさえある。ロバート"マット"ラング門下のエンジニアだったケヴィン・チャーコのプロデュース(作曲面でも貢献している)による音作りは2000年代のヘヴィ・ロックのトレンドを反映したもので、その辺はさすがによくマーケティングされている。Drは前作に引き続き元FAITH NO MOREのマイク・ボーディンだが、ベースはMETALLICAに加入したロバート・トゥルジーロから元ROB ZOMBIEのブラスコに替っている。この年齢でこれだけヘヴィな作品に挑んだ心意気は買うが、個人的にはもっとキャッチーな作風を望みたい。ギター・ソロが印象的なアップテンポの#6「11 Silver」は気に入った。日本盤ボーナスの#11、#12も下手すると本編より良い。

OZZY OSBOURNE
DOWN TO EARTH
74
ダウン・トゥ・アース (2001)

前作制作後、GUNS N' ROSESへの加入の噂が立ったザック・ワイルドが解雇され、新たにかつてランディ・ローズのギター教室の生徒で、ジェイク・E・リーのギター・テクをしていたこともあるというジョー・ホームズ(元LIZZY BORDEN)がツアー・ギタリストとして迎えられた。しかし、ケミストリーが生まれなかったとのことで、本作の制作にあたっては結局ザック・ワイルドが呼び戻されている。本作にはそのジョーとの共作曲も含まれているが、確かにケミストリーは生まれていない(苦笑)。ザックがギタリストを務めているとはいえ、ザックは本作の作曲にはタッチしておらず、U2やTHE CUREを手掛けたプロデューサーであるティム・パーマーや、AEROSMITHなどに楽曲を提供している職業ソングライターのマーティ・フレデリクセン、ヘヴィかつデジタルな音作りに定評のあるスコット・ハンフリーなど、外部ソングライターとの共作曲によってアルバムは構成されている。そのためか、かなり90年代的なヘヴィ・ロック色の強い作風で、ヘヴィかつ単調なフレーズの反復リフを核とした楽曲が主流を占めており、初期のような正統的HR/HMサウンドを期待するファンには結構しんどい作風。ベースがロバート・トゥルジーロ(元SUICIDAL TENDENCIES)でドラムがマイク・ボーディン(元FAITH NO MORE)と聞いた時点でヤバいとは思っていたが…。歌メロ自体はそれなりにキャッチーだし、バラードはなかなか良いが、ちょっとトレンドを意識しすぎじゃないかって気がするのが正直な所。

OZZY OSBOURNE
OZZMOSIS
82
オズモシス (1995)

前作のツアー後、引退を宣言したオジーの復活作。前作のツアーを収録した「LIVE & LOUD」のボーナス・トラック用に用意してあったジョン・パーデル&デュアン・バロンというプロデュース・チームと制作した楽曲群をベースに、一時期新ギタリストに検討していたというスティーヴ・ヴァイとのセッションによって生まれた楽曲を加え、さらにRED HOT CHILI PEPPERSやSOUNDGARDENなどを手掛けたマイケル・ベインホーンをプロデュースに迎えて本格的なレコーディングを開始した。メンバーは留任したザック・ワイルド(G)、そしてサバス時代の僚友ギーザー・バトラー(B)に、スティーヴ・ヴァイが推薦したというディーン・カストロノヴォ(Dr)そしてBLACK SABBATHの「SABBATH BLOODY SABBATH」以来の共演となる元YESのリック・ウェイクマン(Key)という歴戦の強者が揃っている。ジム・ヴァランスやマーク・ハドソン、スティーヴ・デューダスなど外部のソングライターと共作し、収録曲はかなりの数の楽曲から選び抜かれたようだ。発表当時若かった私は「引退撤回なんて往生際が悪い」と本作のリリースに対してあまり印象が良くなかったが、リック・ウェイクマンらしい荘厳なKeyで幕を開ける、ヘヴィなリフとキャッチーなメロディが絶妙なコンビネーションを聴かせる#1「Perry Mason」には有無を言わせぬ説得力がある。全体的にはミドルテンポ主体のヘヴィな楽曲に、かなり練られた歌メロが乗るという作風で、メタリックな興奮には乏しいが、ギリギリ80年代HR/HM好きが受け容れられるバランス感が保たれている。

OZZY OSBOURNE
NO MORE TEARS
85
ノー・モア・ティアーズ (1991)

リリース当時「オジーの引退作」という触れ込みだった作品。ジャケットのアートワークもこれまでとは違ってシリアスなムードがあり、ファンにはかなり感傷的に受け止められた。世間的にも「邪悪なメタルの帝王」のアイコンとなっていたオジーが引退する、というのはインパクトがあったようで、セールス的にも好調な動きを見せた。#2やバラードの#3など、曲名からして保守的な大衆にも受け入れられるテーマの歌詞が増えたことも大衆性の向上に寄与している。そしてその#2がグラミー賞を受賞するなど、売上やチャート順位はともかく、これまであくまで「裏街道の帝王」だったオジーをメインストリームに押し上げることとなった。反面、前作のような攻撃性は控えめで、筋金入りのメタル・ヘッズには物足りなさもあるが、「最終作」という設定がそれも「アリ」にしてしまった感がある。とはいえヘヴィさ、キャッチーさのバランスは絶妙で、スケール感や貫禄を感じさせる楽曲の充実は流石のひと言。ザック・ワイルド(G)が傾倒し始めていたサザン・ロック的な要素(オジーはこれをあまり快く思っていなかったようだが)がほの見えることもアメリカ人に対する効果的なスパイスとなっている。高校時代に初めて聴いたときにはアップテンポな曲が無くてかったるいアルバムだと思ったが、年齢を重ねてあらためて聴いてみると、非常によくできた作品だということに気づかされる、そんな作品。

OZZY OSBOURNE
NO REST FOR THE WICKED
87
ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケット (1988)

脱退したジェイク・E・リーに代わり、ニュージャージー出身の21歳の新人ザック・ワイルドが加入して制作された5枚目のソロ・アルバム。当初ロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースを手掛けたがオジーと喧嘩別れし、結局音楽に口を出すプロデューサーというよりはエンジニア的な仕事に徹するタイプのキース・オルセンが起用されている。前作は商業的には成功したものの、一部では「ポップ過ぎる」という声もあり、オジー自身もそう感じていたのか、本作は攻撃的なリフをメインにしたヘヴィ・メタリックな作風が貫かれている。発表当時、ツアー・メンバーにギーザー・バトラー(B:元BLACK SABBATH)が起用されたこともあってか、この作風を「サバス時代への回帰」とする解釈もあったようだが、このリフ・ワークの歯切れの良さはサバス的なヘヴィネスとは趣を異にするもので、やはり若いアメリカ人ギタリストならではのモダンな感覚に裏打ちされたものと感じる。#1「Miracle Man」からヘヴィかつ切れ味鋭いリフの波状攻撃で、ひたすらペンタトニック・スケールのフル・ピッキングによる速弾きソロで勝負してくるザック・ワイルドはこの時ランディ・ローズもかくやというブロンドの美青年だったが、後に表出してくる男臭さの片鱗が既に現れている。ここにOZZY OSBOURNE最高の名曲は収録されていないかもしれないが、非常にメタルならではのカタルシスを提供してくれる秀作である。

OZZY OSBOURNE
THE ULTIMATE SIN
87
罪と罰 (1986)

当時HEARTの大ヒット・アルバム「HEART」を手掛け、乗りに乗っていたロン・ネヴィソンをプロデューサーに迎えて制作された4作目のアルバム。メンバー・チェンジがあり、ベースがフィル・スーザン、ドラムはランディ・カスティロ(元LITA FORD)に交替している。売れ線のプロデューサーを迎えた効果は明確に音に現れており、サウンド・プロダクションが(当時の感覚において)グッと洗練され、アメリカのHR/HMバンドに通じるブライトなフィーリングがアルバムを支配している。これまで(そしてこの後のアルバムも)常にダブルで録られてきたオジーのVoもあえてストレートに録音されている。中でも#2「Secret Loser」と、「暗闇でドッキリ!」という邦題で有名な(?)#9はこの路線を代表するキャッチーな名曲である。こう言うと単なるポップ路線のアルバムのように思われるかもしれず、実際本作をそのように評価する向きもあるが、実際にはジェイク・E・リーの見事なギター・ワークが充分にHR/HMとしてカタルシスを提供しており、決して軟弱なアルバムではない。当時のHR/HMブームの追い風もあり、LAメタルにも通じるキャッチーさを備えた本作は全米6位を記録する大ヒットを記録したが、本作制作時のプロデューサーとの作業については、オジー自身は悪い印象があったらしく、本作を気に入っていないと公言し、2002年のリマスターが見送られた。

OZZY OSBOURNE
BARK AT THE MOON
86
月に吠える (1983)

事故死したランディ・ローズに代わり、日系人ギタリスト、ジェイク・E・リーを後任に迎えたOZZY OSBOURNE BANDの3作目のアルバム。本作については何といっても冒頭を飾る切れ味鋭いギター・リフと、日本人には「バカだもん」と聞こえるサビが有名な#1「Bark At The Moon」に尽きる。このカッコよさは「これぞHR/HMの真髄!」と形容するに相応しいもので、この曲があまりにカッコよすぎるがために他の曲の影が薄くなってしまっている感は否めない。ジェイクは元ROUGH CUTTで、オジーのバンドを脱退後はブルージーなBADLANDSを結成したという経歴が示すように、基本的にはアメリカンなロック・サウンドを得意とするギタリストだが、本作では前作までにおけるクラシカルなエッセンスがちりばめられた様式臭漂うHR/HMサウンドを意識的に演じようとした節があり、そのことが本作における楽曲の印象をやや中途半端なものにしてしまっているように思える。とはいえ、#4「Rock N' Roll Rebel」や#5「Center Of The Eternity」などは佳曲だし、バラード#6「So Tired」の出来もいい。オジー自身はドン・エイリーによるKeyアレンジを気に入っていなかったらしく、02年リマスターで大幅にKeyサウンドがカットされて(一部ギターも)物議を醸した。

OZZY OSBOURNE
DIARY OF A MADMAN
87
ダイアリー・オブ・ア・マッドマン (1981)

元BLACK SABBATHのVoオジー・オズボーンのセカンド・ソロ・アルバム。前作デビュー作は商業的にも成功を収め、数多くのクラシックを生み出してHR/HMというジャンルを代表する作品の一枚となった。本作においても基本的には前作の流れを汲む、ヘヴィでオカルトなイメージを放ちつつ、実は結構キャッチーなHR/HMサウンドを展開している。前作で話題となったランディ・ローズのモダンなクラシカル・センス漂うギター・プレイを主軸に、#1「Over The Mountain」、#4「Believer」、#7「S.A.T.O.」といったヘヴィ・メタル然とした楽曲から、#2「Flying High Again」のような、その後のLAメタルに通じるキャッチーな曲、#6「Tonight」のようなバラード調まで、より大衆的な方向へ音楽性の幅を広げている。しかし何と言っても本作のハイライトはタイトル曲#8であり、その劇的な曲調は絶品。本作発表後、飛行機事故で他界したランディはこのアルバムについて「スケジュールがキツくて充分に時間がかけられなかった」と不満を漏らしていたそうで、実際#4のGソロはほぼ前作収録の「Mr.Crowly」そのままだったり。ちなみに本作のクレジットにはルディ・サーゾ(B)とトミー・アルドリッチ(Dr)の名前が記されているが、実際にプレイしているのは前作と同じくボブ・デイズリー(B)とリー・カースレイク(Dr)であり、後にこの権利問題が発端となって2002年のリマスター時にリズム・トラックが差し替えられるという事態に発展した。

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