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PRIMAL FEAR
DELIVERING THE BLACK
88
デリヴァリング・ザ・ブラック (2014)

マグナス・カールソン&アレックス・バイロットというハイテク・ソロイストが揃った強力ツイン・ギター体制になっての2作目となる、記念すべき通算10作目のアルバム。普通のバンドであれば10枚もアルバムを重ねるとテンションが落ちてくるものだが、このバンドの場合全くそれがないのが素晴らしい。前述のギタリスト2名に加え、中心人物であるマット・シナー(B)まで、それぞれメイン・ソングライターとしてバンドを成功させられるレベルの人材が3名もそろっているだけあって、アグレッシヴな曲から長尺のドラマティックな曲、そしてバラードまで、つまらない曲は1曲として存在しない。近年の彼らはメロディ志向が強く、それはそれでクオリティが高く楽しめたのだが、今回はやや叙情性を抑えたアグレッシヴなパワー・メタルとしての側面が強く打ち出されており、ヘヴィ・メタルらしい力強いリフがリードする、スピードに頼らない剛直な作風が聴いていて実に気持ちいい。ラルフ・シーパース(Vo)の、もはやメタル界随一と言っていいであろう金属的なハイトーン・ヴォーカルも聴き応え充分。ドイツ製超高性能ヘヴィ・メタル・マシーンとでも呼びたくなる彼らのサウンドは、もはや何が正統で何が異端かわからなくなってしまった現代に、「これこそヘヴィ・メタルだ!」と有無を言わせぬ迫力をもって響いてくる。

PRIMAL FEAR
UNBREAKABLE
85
アンブレイカブル (2012)

ラルフ・シーパースのソロ・アルバム「SHEEPERS」のリリースを挟んで発表された、通算9作目のフル・アルバム。前作発表後、へニー・ウォルター(G)が脱退し、マット・シナー(B)の盟友であるアレックス・バイロット(SINNER, SILENT FORCE, VOODOO CIRCLE)が加入、もう一人のギタリストであるマグナス・カールソンと共に、ギター・ヒーロー級の人材が揃った何気に豪華なツイン・ギター・体制になっている。もっとも、これまでメンバーの流動性とは一切関係なく高い質を備えたピュア・メタル・アルバムを発表してきた彼らだけに、本作のクオリティも保証つき。初期を思わせるゴリッとしたパワー・メタル・ナンバーから、力強いミドルテンポの楽曲、ドラマティックな曲からメロディアスなバラードまで、そしてドイツのバンドらしいメロディック・パワー・メタル・チューンまで、一部の隙もない仕上がり。個人的には今回はメロディアスさとメタリックさのバランスがこれまで以上に秀逸で、これこそ大陸欧州型正統派へヴィ・メタルの王道だと感じられる。各メンバーの高いスキルと経歴ゆえの安定感が、時にスリリングさに欠けるように映ってしまうこともなきにしも非ずなのだが、ポッと出の新人には決して作りえない、職人芸的なメタル・サウンドをコンスタントに生み出してくれるこのバンドの存在は実に心強い。なお、本作にはオリヴァー・ハートマン(元AT VANCE)とエリック・マーテンソン(ECLIPSE)がバック・コーラスでゲスト参加している。

PRIMAL FEAR
16.6 Before The Devil Knows You're Dead
84
16.6(ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユー・アー・デッド) (2009)

セカンド「JAWS OF DEATH」から10年に渡って在籍していたステファン・レイビング(G)が脱退、代わって前作にゲスト参加していたスウェーデン出身のマグナス・カールソン(G, Key)が加入している。かつてないほどメロディアスな装飾をまとっていた前作に比べると本作はギター・オリエンテッドな作風であるが、音楽性のベクトルは明らかにメロディ重視の方向を示しており、この路線を強化するためにマグナスを加入させたのではないかと思われる。正直、個人的に彼らに対してはいまだに硬派なパワー・メタルというイメージがあり、前作や本作のようなバラエティに富んだメロディアスなサウンドには違和感があるのだが、キャリアに裏付けられた楽曲のクオリティの高さは折り紙つき。#2、#5、#10のような典型的なメロディック・パワー・メタル・チューンから、#3、#8、#11のような彼らのお家芸のひとつといえるグルーヴィーなヘヴィ・リフで押してくる曲、#4、#6、#9のようなドラマティックな感触のある楽曲まで、どれも完成度は高い。ただ、やはり前作から増えてきたウエットなメロディは、典型的なメタル・シャウターであるラルフには合わないような気がする。そういう意味で、マグナス・カールソン、へニー・ウォルター、マット・シナーがそれぞれ部分的にリード・ヴォーカルを担当する#12のような形でバラードをプレイするのは面白い試みかもしれない。

PRIMAL FEAR
NEW RELIGION
86
ニュー・レリジョン (2007)

あれれ? こんなに器用なバンドだったっけ? と思ってしまう7枚目のアルバム。Gの片割れが再びトム・ナウマンからヘニー・ウォルターに交替している。これまで愚直なまでに正統的なパワー・メタルにこだわってきた彼らの楽曲が、ここに来て一気に多様化。単純に言うとメロディアスかつキャッチーになっており、#2や#9、#12のような憶えやすいメロディが前面に押し出された曲にその傾向は顕著である。タイトル曲#4や、#8など、従来の流れを汲むアグレッシヴな曲もサビのコーラスはよりキャッチーになっており、#10なんて「ジャーマン・メタル」かと思ってしまいましたよ(いや、ジャーマン・メタルなんですが)。そして何と言っても本作のハイライトは、EPICAのシモーネ・シモンズ(Vo)とデュエットした#3「Everytime It Rains」や、10分に及ぶ組曲構成(#5〜#7)の「Fighting The Darkness」で、そのドラマティックな旋律の素晴らしさは思わず今聴いているバンドが何だったか忘れてしまうほど(笑)。正直、僕が彼らに期待する音楽というのはもっとストレートなもので、「外された」ような印象がないと言えば嘘になるが、本作における各曲のフックの設け方、そしてメロディの充実はベテランならではの妙技といった感じで、納得せざるを得ない。音楽的な意味での楽曲のクオリティは過去最高。マグナス・カールソン(ALLEN-LANDE他)が#1にゲストで参加している。

PRIMAL FEAR
SEVEN SEALS
87
セヴン・シールズ (2005)

前作「DEVIL'S GROUND」は、正直これ以上のものがこのバンドから出てくることはないだろう、と思えるほどに全力を出し切った感のある密度の濃い一枚であった。それだけに本作がこれまで以上の感動を与えてくれるとは思えなかったが、その予想は(嬉しいことに)見事に裏切られた。彼ら自身も「今までどおりにやっていては前作を超えられない」と感じていたのだろうか、本作ではこのバンドとして初めて(現代HR/HMシーンではむしろ「当たり前のこと」にもかかわらず!)ダウン・チューニングを使用し、そのヘヴィな響きが醸し出すブルータリティによって既に臨界点かと思えた彼らの可能性を押し広げることに成功している。劇的な間奏部が印象的な、非常に「らしい」#1「Demons And Angels」から、「これでノれなきゃメタル・ファンなんかやめちまえ」と言いたくなる#2「Rollercoaster」の流れで自然に身体が動き出す。そしてIRON MAIDENばりのイントロから攻撃的なリフと強烈なドラミングの波状攻撃になだれ込む#4「Evil Spell」はこれこそ「現代の正統派ヘヴィ・メタルの理想型」と呼びたくなる名曲だ。#3、#6、#10とバラードが3曲というのはやや多いものの、楽曲のクオリティは申し分ないし、アルバムのテンションを下げすぎないよう構成は考えられている。オビにある通り、まさしく「メタル好きなら、黙って耳を傾けろ」な一枚。

PRIMAL FEAR
DEVIL'S GROUND
85
デヴィルズ・グラウンド (2004)

「メタルは永遠!」というこっぱずかしいスクリームで始まるメタル・アンセム「Metal Is Forever」で幕を開ける本作は、前作で展開した、ややプログレッシヴなコンセプト・アルバム路線から従来のピュア・パワー・メタル路線へと回帰した一作。ちなみにメンバー・チェンジがあり、ギターにトム・ナウマンが復帰、ドラムに元ANNIHILATORのランディ・ブラックを迎えているが、サウンドに全く影響はない。かつての彼らが持っていた、いかにもドイツのバンドらしい野暮ったさは本作には全く感じられず、シュレッド型のストロングなギター・リフを主軸に据えたその音楽は、一転の曇りもない「正統派メタル」そのもの。この姿こそが欧州のメタル・ヘッズの人気の源であるが、日本においては未だにラルフ・シーパース=元GAMMA RAYのイメージが拭えず、彼らに期待されている音像がいわゆる「ジャーマン・メタル」的なものであるために、バンドのビジョンとファンの求めるサウンドの間に一種のギャップが生じてしまっている。本作はかのBURRN! 誌のレビューにおいて「成功を約束される点数」とも言われる90点を獲得し、実際その点数に相応しいクオリティを有しているにもかかわらず、あまり売れなかったという事実は、日本のメタル・マーケットの抱える問題を浮き彫りにしていると言えるかも知れない。個人的にはちょっと暑苦しくて聴き疲れ(苦笑)。

PRIMAL FEAR
BLACK SUN
84
ブラック・サン (2002)

元々はプロジェクト的に始まったものの、前作「NUCLEAR FIRE」が本国ドイツの総合チャートで37位を記録し、もはやマット・シナー(B)にとってもSINNERよりもプライオリティの高い「バンド」になったPRIMAL FEARの4作目のアルバム。本作はバンド史上初となるコンセプト・アルバムで、「鋼鉄の鷲」がこの腐りきった地球を離れて、広大な宇宙の中心にあるという謎の天体「ブラック・サン」を目指すというストーリーが描かれている。このストーリーはリリースの前年に起きたいわゆる「9.11」事件に強く影響されているようで、アラーの名前や戦争、恐怖などにつながるワードがちりばめられている。コンセプト・アルバムだからといって音楽性が変わったわけではなく、いつも通りのピュアな正統派ヘヴィ・メタルが展開されている。ただ、言われてみれば前作に比べると硬質な攻撃性よりも、ドラマティックと形容してもいいウエットな要素が強調され、個々の楽曲よりはアルバムトータルの流れに重きが置かれているように思えなくもない。とはいえ、やはりこのバンドの音楽は、小難しいことを考えず、一点の曇りもない80年代型パワー・メタルの爽快な攻撃性に身を委ねるというのが正しい聴き方だろう。#6と#12にHALFORDのマイク・クラシアク(G)がギター・ソロでゲスト参加している。


PRIMAL FEAR
NUCLEAR FIRE
86
ニュークリア・ファイア (2000)

SINNER時代からマット・シナーの相棒的な存在だったトム・ナウマン(G)が脱退し、元THUNDERHEADのへニー・ウォルターを迎えて制作されたサード・アルバム。メンバー・チェンジが功を奏したのか、素晴らしい仕上がりである。まず、出音が違う。前作までは、良くも悪しくもベテランらしい安定感のある、スリルに欠けるサウンドで、イマイチ緊張感に欠けるきらいがあったが、本作はヴォーカルのスクリームもギターのサウンドもなにやら切迫感を感じるほどに研ぎ澄まされ、攻撃的に迫ってくる。オープニングを飾る「Angel In Black」や、激走チューン#3「Back From Hell」のテンションの高さはかの「Painkiller」を彷彿させるほど。疾走曲からヘヴィな曲、「いかにもジャーマン」なタイトル・トラック、果てはバラード「Bleed For Me」にさえ、どの曲にも緊張感と攻撃性が息づいている。そしてエンディングを飾るのはメタル賛歌ともいうべき「Living For Metal」(メタルのために生きる!!)。個々の楽曲のクオリティといい、その並べ方(曲順)といい、本当によく練りこまれた力作だ。このピュア・メタルそのものと言うべき本作をもって欧州のメタル・ヘッズの支持は確立されたようだが、日本ではイマイチ盛り上がらなかった。やっぱ歌メロが日本人好みじゃないってことなんだろうなぁ…。

PRIMAL FEAR
JAWS OF DEATH
78
ジョーズ・オブ・デス (1999)

ギタリストを2人にして発表したセカンド・アルバム。基本的には前作と同路線の正統派パワー・メタルと言えるもので、その手の音楽のファンが安心して聴けるだけのクオリティは備えている。ただ、これはおそらく「JUDAS PREISTよりTHIN LIZZYが好き」な音楽的中心人物、マット・シナーの素養によるものだと思われるのだが、ちょっと、本当にちょっとなんだけど、ロックン・ロール的なフィーリングが感じられるのよ。これはよく聴けば前作にもあったし、SINNERの音楽にも確実に存在していたエレメントなんだけどね。これが今作は以前より強めに出ていて、ヴォーカル・メロディがやや単調なこともあってサウンド自体の印象がややダーティになってしまっている。この辺は、基本的に美旋律派である僕の感性的には結構マイナス。リズム的にも直線的な疾走ビートが前作より減り、速めの8ビートで押してくる感じ。もちろんそれでも勢いがあってパワフルなんだけど、いわゆる「ジャーマン・メタル」的な音像を彼らに求める向きにはやや不満が残るかもしれない。とりあえず、ラルフにはもっとテクニカルなメロディを歌い上げてほしいなぁ…というのが今でもラルフのGAMMA RAY復帰を諦めきれない僕の感想です。

PRIMAL FEAR
PRIMAL FEAR
81
プライマル・フィア (1997)

GAMMA RAYを脱退(解雇?)したラルフ・シーパースがSINNERのマット・シナーと共に結成したバンドのファースト・アルバム。音楽的には絵に描いたような正統派HMと呼べるもので、ロブ・ハルフォード型のラルフのヴォーカル・スタイルにはまさにうってつけのサウンドである。イントロに続き、ストロングなメタル・リフとアップ・テンポのビート、そしてイングヴェイの「Rising Force」を思わせる歌メロが飛び出してきた時点でガッツ・ポーズを取る人は多いだろう。実際、いわゆるジャーマン・メタル調に疾走する曲からミドルの重心の低い曲、ドラマティックな構成を持つ曲まで、キメ曲といえるほどの名曲こそないものの、どれもなかなかよく出来ている。…が、どこか煮え切らない。これはあまりにも教科書通りのプレイを聴かせるギターの芸のなさ、そしてメロディは明確に存在しているとはいえ、JUDAS PRIESTのように荘厳な緊張感を感じさせるでもなく、GAMMA RAYのような明朗なクサいメロディを聴かせるでもない中途半端さ(これはSINNERにも感じられることだったが)が原因ではないかと思われる。プレイやサウンド・プロダクション等も含め、高品質であるだけに惜しい気はするが、この程度の楽曲にラルフのVoは勿体ない。DEEP PURPLEの「Speed King」のカヴァー入り。

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