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THY MAJESTIE
SHI HUANG DI
83
始皇帝 (2012)

前作発表後、またもやVoと、オリジナル・メンバーだったG、そして前作から加入したKeyの3名が脱退。Gはシングル体制に移行し、KeyはINNER QUESTのジョゼッペ・カルーパを、そしてVoはCRIMSON WINDのアレッシオ・トゥオルミーナを迎えて制作された5作目のアルバム。本作もまたコンセプト・アルバムで、テーマは紀元前3世紀に初めて中国を統一した秦の始皇帝。アルバム・タイトルは「始皇帝」の中国音読みのアルファベット表記である。テーマがテーマだけにエキゾチック・チャイナなオリエンタル・アレンジが満載の異色作かと思われたが、そうした趣向はごく一部のアレンジのみにとどまり、基本的には3rd以降推し進めてきたプログレッシヴな要素を備えたエピック・パワー・メタル路線が展開されている。前作から加入したシモーネ・カンピオーネ(G:HOLY KNIGHTS)がプロデュースやエンジニアリングも担当するなど音楽的中心として大きく貢献。そのサウンドは同時進行で制作されたというHOLY KNIGHTSの復活作同様の高いクオリティを示し、ニュー・シンガーの力強い歌唱と共にB級色を払拭することに成功している。初期のような、むやみに大仰なシンフォ・アレンジやクサい歌メロは控えめながら、サウンド全体から伝わるスケール感は過去最高で、充実作だったHOLY KNIGHTSの復活作同様、聴き応えのある作品に仕上がっている。ファビオ・リオーネ(Vo:RHAPSODY OF FIRE)がゲスト参加。

THY MAJESTIE
DAWN
79
ドーン (2009)

イタリアの中堅エピック・メタル・バンドである彼らの、約3年半ぶりの4thアルバム。本作でVoをとっているのはダリオ・カシオなるシンガーだが、前作で歌っていたジュリオ・グレグリオが脱退してから一時オリジナル・シンガーだったダリオ・グリーロが復帰してみたり、ついでにギターの片割れも交替したりと、これまで同様メンバー・チェンジの紆余曲折を経て発表されている。これまで彼らが発表してきたアルバム同様、本作もコンセプト・アルバムとなっているが、従来と異なるのは、歴史やファンタジーをモチーフにしたストーリー・アルバムではなく、「戦争と死」という、より一般的でシリアスなテーマをコンセプトにしていることである。そのためか、前作・前々作に比べると大仰さが減退し、よりストレートなメロディック・パワー・メタル作品になっている。そのことは、1曲目が仰々しいイントロ曲ではなく、いきなりの歌入り曲であるという事実が象徴しているといえよう。正直、これまでの彼らの最大の美点であった「作り込み感」や「練り込み」があまり感じられない(特にシンフォ・アレンジの面で)ため、最初は物足りなさを感じたが、何度か聴くうちに「最近こういうイタリアらしいB級なメロディック・パワー・メタルもむしろ貴重だし、メロ自体は結構いいかも」と思うようになった。ただ、可もなく不可もない新Voの無難な歌唱のせいもあり、作品に覇気が感じられないのが残念。

THY MAJESTIE
JEANNE D'ARC
82
ジャンヌ・ダルク (2005)

イタリアのシンフォニック・エピック・メタル・バンド、EP「ECHOS OF WAR」を挟み、3年ぶりのサード・アルバム。本作はタイトルでも明らかなように、英仏百年戦争におけるフランスの祖国防衛の英雄となった聖女ジャンヌ・ダルクの活躍から謀殺、死後の再評価までを描いた一大叙事詩で、前作同様シンフォニックなアレンジとドラマティックな楽曲によって聴き応えのある作品に仕上げている。前作がやや優美かつ荘厳なシンフォ・アレンジに頼りがちで、さながら「映画のサントラにメタリックなギターを入れてみました」的なアルバムだったのに対し、今回はかなりギターが頑張っており、エッジの立ったリフと、テクニカルではないものの、よく練り込まれたギター・ソロが前作にはなかったメリハリと聴き所を生み出している。また、前作よりシンガーが交代し、新たにVoの座についたジュリオ・ディ・グレグリオは、前任者よりパワフルで逞しい声質の持ち主で、サウンドをより骨太なものにすることに貢献している。トータル・アルバムながらどの曲もよく練り込まれており、楽曲単位でも楽しめる力作で、制作に3年間を費やしたのも納得の出来栄えといえよう。しかし、そのことは同時に、この作品を超えるクオリティのアルバムをほぼ毎年送り出してきたかつてのRHAPSODYがいかに凄いバンドであったか、ということをあらためて思い知らせる事実だったりして。

THY MAJESTIE
HASTINGS 1066
82
ヘイスティングス1066 (2002)

イタリアのシンフォニック・エピック・メタル・バンド―そう聞けばすぐに想像がつくとおり、RHAPSODYのフォロワーである。しかし、これがなかなか質が高く、フォロワー群の中で頭ひとつ抜けているといっていい。そのクオリティを裏付けているのはサウンド・プロダクションの良好さで、「Scarlet」などという弱小レーベルのプロダクトとは思えない、堂に入ったシンフォニック・サウンドを高らかに奏でている。なんでも、メンバーは本作を制作するにあたり、デモをもとにレーベルに対してこの作品を完成させるためには充分な予算と時間が必要である、とプレゼンし、バジェットと時間を勝ち取ったのだとか。「時間がなかった」「レコード会社が充分な制作費をくれなかった」とインタビューで愚痴をこぼすばかりのミュージシャンたちに爪の垢でも煎じて飲ませたいね。そして実際本作はレーベルに追加予算の投入を決断させるだけのクオリティを有しており、優美なストリングスに壮麗な女声コーラスなど、この手の音楽のファンをくすぐるアレンジを満載しつつ、プログレ風味やケルティックなメロディなども巧みに織り込んで、作品のテーマである「ヘイスティングスの戦い」をハイライトとする「ノルマン人のイギリス征服」という史実に基づく物語をドラマティックに描き出している。ギター・リフが弱いのはシンフォニック・メタルの宿命としても(?)、もう少し歌メロに煽情力があれば凄い作品に仕上がったのではないか。日本盤ボーナスはSTRYPERの「In God We Trust」で、ナイス選曲。ちなみに本作はセカンド・アルバムで、彼らの日本デビュー作。

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